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第2回エネルギーハーベスティング技術セミナーを開催しました

 10月5日(金)に、長岡技術科学大学の武田雅敏准教授と株式会社村田製作所の堀口睦弘様を講師としてお迎えし、第2回エネルギーハーベスティング技術セミナーを開催しました。

≪講演1≫要旨
「エネルギーハーベスティングへの応用を目指した熱電変換技術」
~熱電材料、フレキシブル熱電変換素子の研究開発~
長岡技術科学大学 機械系 准教授 武田雅敏 氏
  
 
 ゴミの焼却熱など大量の熱が無駄に捨てられており、排熱は日本にとって大きなエネルギー源である。熱を電気に変換する熱電材料、熱電変換素子に期待が寄せられているが、発電効率が低い(素子に付与する温度差に依存するが、10%程度)ことが課題であり、国内外で研究開発が進められている。熱電材料の性能を表す指数ZT(性能指数)があるが、良い熱電材料とは、ゼーベック係数が大きい、電気を通しやすい、熱を伝えにくい、という材料である。主な熱電材料としてビスマス・テルル系や、日本で開発された酸化物系などがあるが、それぞれ得意な温度領域がある。熱電変換素子の用途としては、小型の冷蔵庫など冷却の用途が多く、発電の用途としてはNASA惑星探査機の電源として使われている。
 私は大学で、200℃以下の排熱利用を想定したフレキシブル熱電素子の研究を行っている。実際の排熱は200℃以下が圧倒的に多い。また、従来素子は機械的衝撃や熱衝撃に弱い、大きいサイズの素子製作が困難等の課題があるが、フレキシブル熱電素子はこれらを克服するものである。
 自動車の排熱利用発電は一番ホットな分野である。ガソリンエネルギーの約70%は排熱として無駄になっており、その熱で発電できれば燃費の向上につながる。そのため世界中の多くの自動車メーカーが熱電変換素子による排熱利用発電の研究開発に取り組んでいる。その他に、タイヤ空気圧監視センサの電源や、飛行機の点検用のセンサの電源としての用途などが見込まれている。
まとめとして、熱電発電の発電量は小さいが、材料の性能は着実に向上している。個々の機器の省電力化が進み、電力マネジメント技術も進歩しており、センサネットワークの分野での利用が見込まれる。排熱は国産エネルギーであり、これを利用する熱電変換は重要な技術である。


≪講演2≫要旨
「村田製作所におけるエネルギーハーベスティングの取り組み」
株式会社村田製作所 技術・事業開発本部 商品開発統括部 堀口睦弘 氏
   
 村田製作所はエネルギーハーベスティングの用途としてセンサネットワークを中心に、エネルギー源、変換器、デバイス、これらを一体に考えて研究開発を進めている。あたりまえのことだが、発電エネルギーは入力エネルギーを超えることは無い。過度な発電を期待せず、環境が持っているエネルギー量をきちんと見積もることが大切である。
 センサネットワークの課題はバッテリ交換なので、エネルギーハーベスティング目標はコイン電池の代替えである。断続的な使用、例えば農業でのセンシングで、土壌の状態、雨、温度、湿度など、数分に1回程度データが得られれば十分であるような用途に活用できる。RFの低消費電力化も進んでおり、村田製作所では特定小電力で315MHzのEnOceanモジュールを使用している。ZigBee
®のようなマルチホッピングがなく、機器間の認証もないものの、通信速度は125kbpsと速い。発電素子、電源制御、蓄電、マイクロプロセッサ、センサ、RFと、村田製作所では全体をユニットとして提供が可能である。
 村田製作所がターゲットとしている発電デバイスとして、室内光で発電効率の高い色素増感太陽電池、圧電セラミックスまたはエレクトレットを使った圧電変換素子、コンデンサの技術を用いて製造コストを抑えた積層型熱電変換素子など、どの様な環境でも使用できるように様々なデバイスの開発を行っている。
 振動発電のデバイスの種類として、電磁誘導(電力が大きく電圧が小さい)、静電誘導(電圧が高く電流が非常に小さい)、圧電効果(電圧が高く電流が小さい)を利用したものがある。人間の位置確認のため歩行の振動で発電するアクティブRFIDを開発した。また、国内で初めて圧電素子を利用した無線スイッチシステムを、戸田建設との共同で実証実験を開始する。
 まとめとして、環境振動を用いた自立電源や、自己発電スイッチを実現できた。エネルギーハーベスティングは、タイヤ空気圧のモニタリングなどのセンサネットワークへの展開が有望される。


 第3回目のセミナーは12月13日(木)の予定です。
また、エネルギーハーベスティング技術にご興味のある方は、下越技術支援センター星野 (TEL:025-244-9168,E-Mail:enhv@iri.pref.niigata.jp)までお問い合わせください。



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