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新潟県工業技術総合研究所は、工業系の技術支援機関です。

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平成26年度 ものづくり技術連携活性化事業 活動報告



 工業技術総合研究所では、将来性の見込める有望な産業や新技術を調査し、研究開発テーマを設定することを目的として、「ものづくり技術連携活性化事業」を実施しています。

 研究会を組織し、目標とする市場動向や技術動向を調査し、会員企業への情報提供を行うとともに、県内企業による研究開発の可能性等を模索しています。

 今年度は、下記の7テーマについて研究会を設立し活動を行っています。

 これまでの活動の中からトピックスや技術情報をご紹介します。

 1.熱音響機関研究会
 2.難加工成形研究会 
 3.炭化繊維利用研究会
 4.微細加工研究会
 5.3Dアプリケーション研究会
 6.表面処理研究会
 7.音波利用研究会


「熱音響機関に関する調査研究」
目的 細いパイプの束の両端に温度差を与えて音波を発生させ電気や冷熱に変換する熱音響機関は、構造が簡単で変換効率も高く、将来有望な技術である。この熱音響機関を使い工場などの未利用熱を電気や冷熱に変換する装置の実用化を目指す。
調査結果・
トピック
1.実用化のための課題の抽出
・熱音響機関本体にどのようにして熱を取込むか、効率の良い熱交換機の開発
・細いパイプを束にした蓄熱器を低コストで製造する方法
・振動を効率よく電気に変換するリニア発電機の開発
・熱音響機関の用途開発

2.実験と試作
・太陽熱から熱音響機関を駆動する実験を行った。
・熱音響機関で発電させLEDを点灯させる装置を試作した。

3.技術動向
・エンジンから排出される熱を熱音響機関で冷熱に変換し、保冷庫の冷熱源に利用する実験が行われた。

試作した熱音響機関
今後の展開 ・熱音響機関本体への熱の取り込みなど、実用化の課題を解決する方法の検討と簡単な実験を行う。
・企業や大学と連携し、公募型研究事業への研究課題提案を行い、実用化を目指す。
問い合わせ 新潟県工業技術総合研究所 下越技術支援センター 大野 宏
電話 025-244-9168

「難加工耐熱材料の成形技術に関する調査研究」
目的 難加工耐熱材料であるNi基合金の加工技術を確立し、シェールガス等の新エネルギー採掘分野への参入を図る。
調査結果・
トピック
1.Ni基合金の適用製品および適用ニーズ
・シェールガス掘削用機械部品では、従来ガスに比べ採掘深さが深く、また採掘環境が厳しいため、高強度かつ耐食性に優れたNi基合金の採用が増えてきている。特にそれらの部品は、中空形状のことが多く、素材が高価なこともあり、塑性加工による製造が求められている。
・県内でも、Ni基合金の成形実績を持つ加工企業が認められる。また一部企業では、採掘機械用部品への取り組みが見られる。

2.Ni基合金の成形技術
・成形上の代表的な課題として、加工荷重の低減、成形時の割れなどが挙げられる。
・成形性の向上を図るため温間プレスの取り組みも報告されているが、成形温度が比較的高いこと(600~700℃以上)に加え、材料特性の低下を防ぐために対象材料が限定される。
今後の展開 ・航空機部品等他の分野の部品についても適用を検討する。
・県内企業ニーズに対応した研究課題の提案を目指す。
問い合わせ 新潟県工業技術総合研究所 研究開発センター 本田 崇
電話 025-247-1320

「炭化繊維利用に関する調査研究」
目的 繊維素材(綿、レーヨン、シルク等)を炭化して吸着性能の高い活性炭を開発し、環境浄化装置への実用化を目指す。また電極素材への適用や不導体への導電性の付与など新たな機能性を持った製品開発を目指す。
調査結果・
トピック
  
1.炭化実験および性能評価
・賦活化処理した炭化綿についてメチレンブルー吸着量を測定した結果、ヤシガラ活性炭以上の性能があることを確認した。

2.機能性を活かした用途開発
・高い吸着性能を活かし、染色排水やメッキ処理液の吸着材として活用
・高い比表面積を活かし、電気二重層キャパシタ、燃料電池、バイオ燃料電池用電極への活用等を検討している。
メチレンブルー吸着後の色差比較
(左から賦活化処理炭化綿、ヤシガラ活性炭、
賦活化処理なし炭化綿)
 
炭化処理炉 
今後の展開 各種素材の加工条件を見いだし、その性能評価を実施する。企業連携による炭化繊維利用を進めていく。
問い合わせ 新潟県工業技術総合研究所 素材応用技術支援センター
明歩谷 英樹
電話 0258-62-0115

「微細加工技術に関する調査研究」
目的 微細加工技術を応用した分析チップを開発し、農業や食品分析分野への展開を図る。
調査結果・
トピック
1.農業および食品分野における分析技術
・農業分野では、植物工場や大規模営農の拡大とともに、作業効率の向上を図るために養液や土壌の分析ニーズが高まっている。
・食品分野では、有機酸やアミノ酸の定量、腐敗による変質の測定などへの応用、また医療分野は参入障壁が高いが、低侵襲性医療分野に参入の可能性がある。

2.微細流路を用いた定量分析実験
・高電圧を流路に印加することでイオンを分離できることが分かった。
・測定感度の向上等検出器に課題があることが分かった。
・分析装置を試作中。
今後の展開 農業分野への分析利用技術に関して、公募型研究事業への研究課題提案を行い、実用化を目指す。
問い合わせ 新潟県工業技術総合研究所 研究開発センター
レーザー・ナノテク研究室 宮口 孝司 
電話 0258-47-5171

「3Dアプリケーションの工業利用に関する調査研究」
目的 3次元形状のデータの入出力に着目して企画・設計・試作・ 量産・品質管理の工程間の円滑化を図る。また3Dデータを介した異業種連携でのメディアフランチャイズを目指す。
調査結果・
トピック
県内企業の取組状況および技術的課題
・県内では、3D-CADはかなり普及が進み、サンプル試作や評価検討用として3Dプリンタを導入する企業は増えている。しかしながら企業間や工程間で一貫したデータ管理を行う体制の構築は今後の課題として挙げられる。
・新技術に対する企業の意識として、サンプル用途だけでなく実製品用途への展開は期待と不安が両方ある。そして今後のプリンティング装置の高速化、高精度化、材料の多様化、装置・材料の低廉化に関心が持たれている。
・個人毎に個別の形状が必要な医療福祉用途などで、形状計測・設計・加工(製造)を一貫してデジタルエンジニアリングする価値がありそうなため詳しく検討している。
今後の展開 3次元データの活用技術の調査及びプリンティング技術の動向調査を引き続き行う。
問い合わせ 新潟県工業技術総合研究所 研究開発センター 阿部 淑人
電話 025-247-1320

「新規表面処理技術に関する調査研究」
目的 RoHSやREACH規制の施行により環境規制が強化され特定有害物質の使用が制限されたことから、環境負荷の少ない新規表面処理技術の開発を目指す。
調査結果・
トピック
1.新規表面処理技術
(1)エアロゾルデポジション法
 常温で成膜できるセラミックコーティング技術(焼かないで作るセラミック膜)。セラミック膜であるため耐食性や硬さを出すこともでき、めっきや溶射とは異なる性質を付与することができる表面処理技術。
(2)環境適応型めっき
 航空機分野では耐食性の優れているカドミウムめっきから亜鉛ニッケル合金へシフトしつつあり、実用化が進んでいる。また、作業環境や周辺環境への配慮および耐食性の観点で6価クロムめっきから3価クロムめっきへ移行してきている。しかし、未だに機械特性やコストに関しては6価クロムめっきに及んでいないのが現状である。

2.県内企業の動向
 県内でも亜鉛ニッケル合金めっきや3価クロムめっきを取り扱う企業が出てきているが、特性やコストに課題を有している。
今後の展開 ・企業や大学等と連携し、公募型研究事業への研究課題提案を行い実用化を目指す。
問い合わせ 新潟県工業技術総合研究所 下越技術支援センター 幸田 貴司
電話 025-244-9168


「音波を利用した要素技術に関する調査研究」
目的 音波を利用した要素技術や応用分野について調査研究を行い、新たな付加価値を持った製品開発を目指す。
調査結果・
トピック
 
1.次世代の音波利用技術
 近年、創薬やバイオ分野への利用を目的として、超音波を利用した非接触型の液体(物体)の輸送や混合の研究が盛んに行われている。この技術は紛体や固体(例)微小部品)等の非接触ハンドリングやマニピュレーター等への応用も期待できる技術である。

2.音波を利用した人工受粉に関する調査および実験
(1)人工受粉技術
 菜果類、例えばイチゴは花粉媒介昆虫(ハチ)を利用した受粉が行われているが、天候等の外部環境に影響される為、受粉の管理が難しく、より安定した受粉を得られる人工受粉技術が望まれている。
 京都大学らの研究グループでは、イチゴやトマトをターゲットとして、集束超音波を利用した人工受粉装置の研究開発を行っており、イチゴについては花房を共振周波数(約30Hz)にて加振することで着果から収穫までを確認している。
(2)人工受粉実験
 可聴域スピーカを用いてイチゴに対して人工受粉実験を行い、15Hz及び30Hz程度の周波数帯にて花房の共振現象と花粉の飛散を確認した。
 
今後の展開 ・人工受粉に最適な音響パラメーター等を探索し、実用化に向けた課題を明確化する。
・企業等との共同研究、公募型研究事業への研究課題提案を行い、実用化を目指す。
問い合わせ 新潟県工業技術総合研究所 下越技術支援センター 大川原 真
電話 025-244-9168




 お問い合わせ
  新潟県工業技術総合研究所  企画管理室
   TEL 025-247-1301



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