日本自転車振興会

補助事業名「平成17年度公設工業試験研究所の設備拡充補助事業」

完了報告

 

【 補助事業の概要 】

 

(1)事業の目的

新潟県における機械金属中小製造業の技術水準の高度化と技術支援の充実強化を図るため新潟県工業技術総合研究所の設備を拡充し、機械工業の振興に寄与する。

(2)実施内容等

「顕微レーザーラマン分光装置」を新潟県工業技術総合研究所中越技術支援センターに設置し、試験研究「MEMS製品製造プロセスの開発」を行った。

「MEMS製品製造プロセスの開発」ではシリコンウェハーにナノレベルの微細加工を施して、加速度センサやガスセンサ、また光通信用デバイス等、機能素子を作成する技術を開発している。微細加工によってシリコンウェハーに残った歪みはMEMS製品の品質を劣化させる原因となるが、この歪みを分析する装置として「顕微レーザーラマン分光装置」を使用した。シリコンの結晶格子が引き延ばされたものと押し縮められたものを用意し、その分析を行った。両試料で分析結果に差が得られ、今後の加工方法改善に利用できることがわかった。

また、MEMSでは、新しい機能を得るために様々な材料も利用する。今年度は、加工後のシリコン表面に付与するべくカーボンナノチューブと二酸化ケイ素を化学反応で生成した。それぞれの品質特性をレーザーラマン分光装置で評価することによって、最適な生成条件を決めることができた。カーボンナノチューブでは、水素ガスとメタンガスの流量や反応温度等を最適化し、単層チューブの生成に成功した。二酸化ケイ素では、ゾル-ゲル法で生成した後の回復熱処理温度の影響を確認できた。
以上、本装置の導入により、MEMS技術の高度化に必要不可欠な材料の特性分析が可能となった。

【 予想される事業実施効果 】

 

MEMSは今後の市場拡大が期待されている。この技術を開発し、県内企業への技術普及を行う。これにより機械工業を中心とする県内製造業におけるナノテク関連技術に関する新規事業の創出、高付加価値化が推進され、製造業の技術振興が実現される。技術普及に際しては、レーザーラマン分光装置の導入が、カーボンナノチューブや各種薄膜の成膜プロセスの最適化のみならず、製造工程で発生する微細な欠陥の特定にも有効なことから、製造製品の品質改善の確立を促進する。

更に、工業技術総合研究所においては、補助事業で整備された研究機器を使用して、地場産業に密着した加工製品の高度化に関する研究を行うとともに、日常的に発生する企業からの技術相談についても、当該設備を使用して企業支援を行っていく予定である。これらの研究や技術支援をおこなうことにより、地場産業の活性化とともに雇用の安定が図られるものと考えている。

【 本事業により導入した設備 】  

 

顕微レーザーラマン分光装置
   
設置場所 新潟県工業技術総合研究所中越技術支援センター

用途 半導体材料からポリマー、炭素材料、薄膜などの各種材料の特性評価を行う。

 

レーザラマン分光装置は、物質に励起光であるレーザ光を照射し、そこから散乱される物質特有のラマン散乱光を測定する装置です。特別な前処理やサンプリングを必要とせず、非破壊で測定することができます。また、温度や圧力、その他の条件を変化させながら測定することもできます。測定されたデータから分子種、原子団の種類、結晶構造に関する情報を、レーザの偏光を利用して結晶軸、結晶面、分子配向の情報を得ることができます。また、レーザ光を励起光として使用するため、顕微鏡と組み合わせることによりμm単位のサンプル領域を測定することができます。半導体分野では、Siデバイスの微小領域でのストレスの評価やDLC膜の品質管理、あるいはウェハー上の異物の分析などに使われます。

 

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