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新潟県工業技術総合研究所は、工業系の技術支援機関です。



ガスクロマトグラフ質量分析装置 (GC/MS) による発生ガスの分析

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1.はじめに
 GC/MSは、試料の加熱で発生する混合ガス成分を分離し、その質量を測定することで、物質の種類を特定します。
 試料に含まれる物質は、温調機能のある前処理装置とGC/MSの組み合わせによって、有機溶剤による抽出をすることなく、試料から直接分析することができます。
 
2.装置構成と前処理
  下越技術支援センターではGC/MS (Agilent 7250 GC/Q-TOF) にパイロライザー (Frontier lab PY-3030D) とヘッドスペースサンプラー (Agilent 7697A) の二種類の前処理装置を接続し、用途によって使い分けます。パイロライザーは試料を約1000℃までの高温に加熱できます。またヘッドスペースサンプラーは、比較的大きなサイズの試料などを低温で加熱します。以下にそれぞれの手法を用いた事例を示します。

3.分析事例
 塩ビ配管の分析事例を示します (図1)。約0.1mg大に切り出した塩ビ管をパイロライザーにて加熱し (100 – 320℃、20℃/min昇温)、GC/MSに導入しました。保持時間約8.6 分に検出された最も大きなピークについて、得られたMSスペクトルをNIST (質量スペクトルデータベース) によるデータベースサーチに供したところ炭化水素系の物質であることがわかりました。

塩ビ管


図1 塩ビ管より発生するガスの分析フロー

 次にビールの分析事例を示します (図2)。市販のビール12mLをバイアルに入れ、ヘッドスペースにて加温し (40℃、20min平衡化)、GC/MSに導入しました。保持時間約7.8 分に検出された最も大きなピークについて、得られたMSスペクトルをNISTによるデータベースサーチに供したところ香気成分のイソアミルアルコールであることがわかりました。
     
ビール


図2 ビール揮発成の分析フロー

4.おわりに
  本装置の活用により、比較的簡易に試料から発生するガス成分を特定することができます。例えば樹脂に含まれる微量の添加剤成分の検出を目的とした試験も可能です。また工業材料だけでなく、食品等の幅広い試料種にも適用することができます。

  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
        下越技術支援センター   山下 亮、渋谷 恵太
        TEL:025-244-9168   FAX:025-241-5018
      (令和3年3月18日)