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高速液体クロマトグラフ(HPLC)による糖、アルコールの分析
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1.はじめに
高速液体クロマトグラフ(HPLC)を使った分析では、溶離液には一般にアセトニトリル、メタノール、テトラヒドロフランなどの有機溶剤が使用されます。それらは高価であり、また劇物や有機溶剤に該当するなど取り扱いや廃棄に注意が必要です。
そこで今回は水を溶離液とした場合に、私たちの生活に身近な糖やアルコールの分析がどの程度可能なのかについて試験、検討を行いました。
2.使用機器、測定条件
HPLC:(株)島津製作所製 SCL-10Avp(図1)
検出器:RI(屈折率検出器)
溶離液:超純水、1.0mL/min
カラム:PREP-SIL、250mm×20mm、40℃
図1 (株)島津製作所製 SCL-10Avp
3.分析事例
各種の糖を測定したクロマトグラム(チャート)を図2に示します。どの糖もほとんど同じ保持時間(ピーク位置)でした。糖の種類の定性や複数種の糖が混合した溶液における各成分の定量は不可能なことがわかりました。ただ、ピークそのものは明瞭に現れるので、糖の種類が既知でかつ単一の場合にはピーク面積から検量線を作成し定量を行うことは可能と思われます。
アルコールの測定結果を図3に示します。アルコールの種類ごとにピークは違った位置に現れました。ピーク分離は十分でなく大きく重なり合っているため、複数のアルコールが混合した溶液における定量は難しいものの、アルコール種の定性には適用できる可能性があります。
図2 糖の測定結果
図3 アルコールの測定結果
ビール、発泡酒、第3のビール(糖質70%オフ)、ノンアルコールビールについてn-ブタノールを5%添加して測定した結果を図4に、添加物質を内部標準として糖分とアルコール分のビールとの濃度比を概算した結果を表1に示します。糖質70%オフを謳う第3のビールは糖とみられるピークの面積はビールの30%台であり、当然ながらノンアルコールビールはアルコールのピーク位置にピークは現れませんでした。
図4 ビール系飲料の測定結果
表1 ビールを100とした場合のビール系飲料の糖、アルコールのピーク面積
4.おわりに
今回は一番手軽で安心安全な物質である水を溶離液に使用したHPLC測定にトライしましたが、分析内容や求めるレベルによっては十分有用なデータを得られる可能性があることが分かりました。
問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
下越技術支援センター 渋谷 恵太、山下 亮
TEL:025-244-9168 FAX:025-241-5018
(令和3年3月29日)
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