Topページ > 不動態化処理ステンレス鋼の耐食性挙動 |
2.2 孔食電位測定
孔食電位測定で用いた試験装置の概略を図1に示す。本装置は電解槽、参照電極、ポテンショスタット、解析用PCから構成されている。なお、対極にPt電極、参照電極には甘コウカロメル電極を用いている。測定試料は、前述の不動態化処理試料に導線をスポット溶接によって接続し、10×10mmの試料面を残して試験片および導線を絶縁物で被覆した。試験溶液は、5%NaCl水溶液を使用し、試験前にアスピレータによる脱気を60分行い、温度は30±1℃とした。また、測定中においても電解槽内の脱気を行うためN2ガスを流入した。
測定は、試料を電解槽内の試験溶液中に完全に浸し、10分放置後、自然電極電位から電位掃引速度20mV/minでアノード電流密度が1000μA/cm2に達するまで行った。孔食電位は、アノード分極曲線において電流密度が100μA/cm2に対応する電位のうち最も貴な値とした。
2.3 塩化第二鉄腐食試験
塩化第二鉄腐食試験において、試験で用いた溶液は、0.05mol/LのHCl水溶液にFeCl3・6H2Oを溶解して塩酸酸性6%FeCl3溶液に調整した。この溶液中に質量測定後の試料を水平に保持するように置き、35℃で6時間浸漬した。そして、浸漬後の試料の質量を測定して単位面積、単位時間当たりの減量(g/m2・h)を求めた。
2.4 XPS分析
XPS分析では、深さ方向の各元素の濃度分布(デプスプロファイル)とCr2pスペクトルの測定をArイオンエッチングにより行った。用いたXPS分析装置は、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製K-Alphaである。X線源は、単色Al
Kα線を用い、照射径は400μmとし、中和銃を使用した。定性分析であるサーベイスキャンは、パスエネルギー200eV、エネルギーステップ1eVとした。ナロースキャンは、Cr2pスペクトルについて、パスエネルギー50eV、エネルギーステップ0.1eVとして行った。Arイオンエッチング条件は、SiO2換算で10nm/minとなる加速電圧3kV、エッチングエリア2×2mmとし、エッチング間隔は2secで合計60secエッチングした。
問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所 下越技術支援センター 諸橋 春夫、水沼 達郎 TEL:025-244-9168 FAX:025-241-5018 (令和4年2月3日) |