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トラブルが起こりやすい鉄鋼材料の金属組織


 中越技術支援センター 
主任研究員 斎藤 雄治

 鉄鋼材料の機械的性質は、金属組織と密接な関係があることが知られています。同一の組成(材料を構成する成分やその量の割合が同じ)であっても、熱処理などによって金属組織が変わると、強さ、硬さ、靭性等の機械的性質が大きく変わります。
 金属組織は、観察面を鏡面研磨して薄い酸で腐食することにより、顕微鏡で観察することができます。観察後に文献、社内データ、組織写真集と比較することにより、加工(圧延・鍛造等)や熱処理が適切であったか考察することができます。以下に鉄鋼材料の破損等のトラブルが起こりやすい金属組織を紹介します。

(1)脱炭
 鋼材を高温に加熱すると、空気中の酸素と鋼材表面の炭素が結合(CO、CO2)して抜けていく現象です(図1)。これにより、鋼材の表面近くの炭素の濃度が内部に比べて低くなります。この状態で焼入れを行うと、内部は焼きが入りマルテンサイトという組織になって体積膨張しますが、表面は炭素が少なく焼きが入らないため体積膨張しません。これによって、表面に引張の残留応力が生じやすくなり、強度的に不利な状態となります。

(2)過熱
 適正な加熱温度より高温に加熱(過熱)して冷却すると、結晶粒が大きく成長します(図2)。このため、強度(特に靭性)が大きく低下します。
適正な加熱温度より高温に加熱(過熱)して焼入れすると、全てがマルテンサイト組織とはならず、一部にオーステナイト組織(残留オーステナイト)が残った状態となります(図3の白色の組織)。残留オーステナイトは軟らかいため硬度不足である上、経年変化でマルテンサイト組織になって体積が増え、寸法変化を起こすことがあります。

(3)不完全焼入れ
 適正な焼入れ温度より低い温度から焼入れを行った場合(図4)や、焼入れの際の冷却速度が小さい場合(図5)にみられます。硬度が低下したり、靭性が小さくなったりします。


図1 炭素工具鋼(炭素量0.88%)の脱炭組織

図2 炭素鋼(炭素量0.32%)の過熱組織(焼きならし)

図3 炭素工具鋼(炭素量1.16%)のマルテンサイトと残留オーステナイト(適正な焼入れ温度より高い温度から焼入れした場合)

図4 炭素鋼(炭素量0.32%)のマルテンサイトとフェライト(適正な焼入れ温度より低い温度から焼入れした場合)

図5 炭素鋼(炭素量0.32%)のマルテンサイトとフェライト(焼入れの際の冷却速度が小さい)
 


 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター
         TEL 0258-46-3700



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