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鋼材の水素脆性(ぜいせい)について


 中越技術支援センター 
主任研究員 斎藤 雄治

 当センターには、企業から金属製品・部品の破損等のトラブルに関する相談が多く寄せられます。ここでは、その中から水素脆性について解説します。

 水素脆性は、鋼材中に水素が吸収されることによって、鋼材が脆くなる現象をいいます。水素は、腐食、溶接、酸洗浄、電気めっきなどによって鋼材に吸収されます。鋼材に水素が吸収されると脆化する理由については、はっきりしていません。水素原子が集まって分子となり、内部圧力が高まって割れるという説や、原子の並びが不均一な部分(転位といいます)に集まった水素原子が、鉄同士の結合を妨げて材料の強度を低下させるという説などが提唱されています。

 鋼材に入り込んだ水素は、ベイキングという200℃程度に加熱・保持する熱処理によって、ある程度、放出することが可能と言われています。しかし、以下のような場合には鋼材に吸収された水素が放出されにくくなるため、水素脆性が起こることもあります。

・めっきなど水素が吸収された後、すぐにベイキングをしなかった。
・ベイキングの温度が低かった、あるいは時間が短かった。
・ベイキングの効果が少ない高強度の鋼材を使用した(HRC46以上)。
・ベイキング効果が低い(ベイキングを行っても水素が抜けにくい)亜鉛めっき、厚めっき、光沢めっきを行った。
・酸洗時間が長い、あるいは高濃度の処理液を使用したため、多くの水素を吸蔵した。
・切欠きや介在物など、応力集中によって割れを招くものが品物の表面にあった。

 最後に、めっきした鋼材の部品が壊れた事例を紹介します。二例紹介しますが、いずれもほぼ新品の状態で破断したものです。壊れた破断面を電子顕微鏡で観察した結果を図1図2に示します。図1は低強度の鋼材の部品で、図2は高強度の鋼材の部品です。図1と図2で破断面の様子は異なりますが、いずれも材料が脆かったことを示す脆性破面というものになっていました。部品に大きな力を加えた跡が見当たらなかったことから、水素脆性が原因ではないかと結論づけました。


   
 図1 低強度の鋼材の水素脆性の破断面 図2 高強度の鋼材の水素脆性の破断面
 (電子顕微鏡写真、粒内型の脆性破面) (電子顕微鏡写真、粒界型の脆性破面)


 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター
         TEL 0258-46-3700



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