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窒素含有ニッケルフリーステンレス鋼


 中越技術支援センター 
専門研究員 三浦 一真

 SUS304、316に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼(クロム(Cr)-ニッケル(Ni)系)は延性・強度・耐食性などに優れ、溶接性も良好であることから家庭用品、建材、一般機械、産業機械、電気機器、医療用途などに幅広く使用されています。

 オーステナイト系ステンレス鋼の主要元素であるニッケル(Ni)は希少金属のひとつであり、将来にわたり長期に安定に供給されるとは限りません。最近では2006~2007年にかけて、Niの高騰によるオーステナイト系ステンレス鋼の価格上昇と鋼材不足を招いています。したがって、将来的にはNiを含まない代替ステンレス鋼の開発が必要になるものと思われます。

 Niを含まないオーステナイト系ステンレス鋼として、Niと同様、オーステナイト安定化元素である窒素を添加したステンレス鋼が注目されています。これはクロム(Cr)が20%以上のいわゆる高Cr系フェライト系ステンレス鋼を窒素雰囲気下で高温処理(窒素吸収処理)すると、約1%の窒素が吸収され、オーステナイト組織に変態することで得られます(図1参照)。

 窒素の素材への添加方法は大きく二通りあり、一つは加圧ESR(Pressurized Electro Slag Remelting:P-ESR)溶解法、加圧誘導溶解法、メカニカルアロイング法のように窒化物(例えばFeCrN,Cr2N)の形で原料に窒素を含有させ、それらを高圧(~5MPa)の窒素ガス雰囲気で溶解、あるいは焼結して窒素をステンレス鋼に添加する方法、もう一つは窒素ガス雰囲気で窒素の添加していないステンレス鋼をオーステナイト相に変態する温度域(約1200℃)で加熱する方法(固相窒素吸収法)があります。

 この窒素含有Niフリーステンレス鋼は優れた機械的特性と耐食性が期待され、腐食環境で使用する構造材料、各種プラント施設、医療・生体分野の他、Niによる金属アレルギーが問題となる分野への応用も期待されています。


図1  窒素吸収処理前後の金属組織の一例



 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター
         TEL 0258-46-3700