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機械部品によく使われる鉄鋼材料


中越技術支援センター  
主任研究員 斎藤 雄治

 鉄鋼材料は鉄を主成分とし、炭素やケイ素など各種元素を含みます。鉄以外の元素の種類と量(化学成分)によって、鉄鋼材料の強さ(機械的性質)や錆びにくさ(耐食性)などの特性は大きく変わります。鉄鋼材料には多くの種類があり、日本工業規格(JIS)で識別記号、化学成分、強度などが規定されています。ここでは、機械部品によく使われる鉄鋼材料について簡単に説明します。

【機械構造用炭素鋼鋼材(S○○C(○○には数字が入る):Steel Carbon)】
 化学成分が細かく規定されており、歯車などの機械部品に熱処理して使われます。SC材とも呼ばれます。JIS記号はS10C~S58Cまであり、SとCの間の二桁の数字は炭素含有率(%)の100倍を表します。炭素含有率が多い程、焼入れしたときに硬度が高くなります。小物部品であれば焼入れ可能です。ただし、小物であっても、断面の中央部には焼きが入りにくいので注意が必要です。大物の場合は、表面だけ焼きを入れます(炭素量が多い鋼種は高周波焼入れ、少ない鋼種は浸炭焼入れ)。

【機械構造用合金鋼鋼材】
 前述のSC材にクロムやマンガンなどの元素を添加して、引張強さや粘り強さ(耐衝撃性)を高めた鋼材です。用途は歯車、ボルト、シャフト等の機械部品です。化学成分は細かく規定され、熱処理(焼入れ焼戻しなど)をして使われます。JIS記号はアルファベット+3桁の数字で表します。アルファベットには、SMn(マンガン鋼)、SMnC(マンガンクロム鋼)、SCr(クロム鋼)、SCM(クロムモリブデン鋼)、SNC(ニッケルクロム鋼)、SNCM(ニッケルクロムモリブデン鋼)、SACM(アルミニウムクロムモリブデン鋼)があり、焼入性や靱性等の向上のために添加した元素記号の頭文字が使われています。アルファベットに続く最初の数字は添加した元素の含有量(数字が大きい程、多い)、下二桁の数字は炭素含有率(%)の100倍を表します。SC材に比べ、大物でも焼入れすることができます。

【ステンレス鋼(SUS:Steel Use Stainless)】
 クロム含有量10.5%以上、炭素含有量1.2%以下とし、耐食性を向上した鋼材です。サスとも呼ばれます。最大の特徴は、自然に形成される強固で薄い酸化被膜(一種のさび)により、腐食が進みにくいことです。JIS記号はSUS+3桁の数字で表します。化学成分は細かく規定され、必要に応じて熱処理をして使われます。SUS304はステンレス鋼の中で最も多く作られ、耐食性、耐熱性、耐寒性などに優れ、建築金物や食品機械などに広く使われます。

【ねずみ鋳鉄品(FC:Ferrum Casting)】
 炭素やケイ素を多く添加した鋳造用の鉄(鋳鉄)です。名前の由来は、灰色の破面になる鋳鉄の製品です。耐摩耗性が高い、切削性が高い、振動吸収性が高い、引張強さが低くてもろい、塑性加工や溶接加工に適さないという特徴があり、歯車、シリンダ、ピストンリング、ブレーキシュー、工作機械のベッドやテーブル等に使われます。JIS記号はFC100~350まで6種類が規定され、FCの後に続く3桁の数字は引張強さの最低値(単位 N/mm2)を表します。化学成分は細かく規定されていません。



 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター
         TEL 0258-46-3700