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ステンレス鋼の種類


中越技術支援センター  
主任研究員 斎藤 雄治

 JIS(日本工業規格)によると、ステンレス鋼は、クロム含有量10.5%以上、炭素含有量1.2%以下とし、耐食性を向上した鋼材と定義されています。一口にステンレス鋼と言っても、結晶の状態を表す金属組織というものによって、大きく5種類に分けられています。ここでは、これら5種類のステンレス鋼について簡単に説明します。

【マルテンサイト系ステンレス鋼】
 主成分はクロムと炭素です。焼入れをするとマルテンサイトという硬い金属組織になります。高価なニッケルを含まないため安価ですが、厳しい環境下で錆びやすく、ステンレス鋼の中で最も耐食性に劣ります。JIS記号にはSUS403、410、420、440などがあります。用途は、高強度、耐食性・耐熱性が必要なタービンブレード、ポンプ、シャフト、ノズルなどです。ナイフや包丁などの刃物としても使われます。高温から空冷するだけで焼入れができるため、溶接の冷却などで注意が必要です。

【フェライト系ステンレス鋼】
 主成分はクロムです。常温でフェライトという金属組織になります。JIS記号にはSUS430、447、XM27などがあります。焼入れはできません。強度は高くありませんが、ニッケルを含まないため安価で、オーステナイト系に次ぐ耐食性をもちます。用途は、一般的な耐食性を要する厨房用品、建築内装、自動車部品、ガス・電気器具部品などです。強度がさほど高くないことや、比較的脆いことに注意が必要です。

【オーステナイト系ステンレス鋼】
 主成分はクロムとニッケルです。常温でオーステナイトという金属組織になります。JIS記号にはSUS304、316などがあります。ステンレス鋼で最も耐食性に優れ、低温・高温での特性も優れます。焼入れはできませんが、延性・靭性に富み、深絞りや曲げ加工などの冷間加工性が良好で、溶接性にも優れます。磁石には付かない(付きにくい)ステンレス鋼としても知られています。用途は、家庭用品、建築用品、自動車部品、化学プラント、食品工業、原子力発電、LNGプラントなどです。プレス加工後の置き割れ、600~900℃の長時間加熱による耐食性低下や脆化、塩化物環境中での応力腐食割れなどに注意が必要です。

【オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼(二相ステンレス鋼)】
 主成分はクロムとニッケルです。常温でオーステナイトとフェライトという金属組織が混在します。JIS記号はSUS329です。耐食性はオーステナイト系に近いですが、応力腐食割れは起こしにくいです。用途は海水用復水器、熱交換器、排煙脱硫装置などの公害防止機器や各種化学プラント用装置です。フェライト系と同様、比較的脆いことに注意が必要です。

【析出硬化系ステンレス鋼】
 主成分はクロムとニッケルです。アルミニウムや銅などの元素を少量添加し、析出硬化処理(焼入れ、焼戻しと似た熱処理)という熱処理によってこれらの元素の化合物などを析出させて硬化しています。JIS記号はSUS630、631です。常温~500℃の強度に優れます。用途はタービン部品、スプリングなどです。


 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター
         TEL 0258-46-3700