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新潟県工業技術総合研究所は、工業系の技術支援機関です。

Topページ > 県央技術支援センター > 【県央技術トピック】刃物鋼(青紙2号)の硬さと金属組織

【県央技術トピックス】 


 県央技術支援センター 
主任研究員 斎藤 雄治

 日立金属(株)のヤスキハガネの青紙は、白紙にクロムやタングステンを加えて熱処理特性や耐摩耗性を向上させた高級刃物鋼です。ここでは、種々の温度で焼入れした青紙2号について、硬さと金属組織を調べた結果を紹介します。なお、この試験は平成26年11月~12月に実施したものです。

1.実験条件

・試験片 :日立金属 青紙2号(厚さ1mm)とSUS410(厚さ2mm)の積層材、
      サイズ 19×74×3mm
・実験装置:(株)東洋製作所製 電気マッフル炉 KM-420
      (株)明石製作所 マイクロビッカース硬度計 MVK-G1
      (株)ニコンインステック製 倒立型金属顕微鏡 TME3000U-NR型
・熱処理 :焼入れ…750~900℃の各温度に10分保持後に水冷
      焼戻し…200℃に1時間保持後、空冷(低温焼戻し)
・硬さ試験:試験片断面を鏡面研磨後、マイクロビッカース硬度計でビッカース硬さ(HV0.5)を試験
・金属組織:試験片断面を鏡面研磨後、硝酸-アルコール溶液(HNO3 3ml、エチルアルコール97ml)で腐食後、金属顕微鏡で金属組織を観察

実験結果

(1)熱処理前の試験片の金属組織

 金属組織の観察結果を図1に示します。大きさが1μm程度の無数の炭化物が見られます。基地組織はフェライトです。場所により基地組織の色に濃淡が見られるのは、フェライトの結晶方位の違いによるためと考えられます。

(2)熱処理後の試験片の硬さと金属組織

 まず、種々の温度で焼入後に200℃で焼戻した試験片のビッカース硬さの試験結果を図2に示します。硬さは、焼入温度が750℃ではかなり低く、焼入温度が800~850℃ではほぼ一定で、焼入温度が900℃ではやや低下していることがわかります。

 次に、種々の温度で焼入後に200℃で焼戻した試験片の金属組織の観察結果を図3~図9に示します。図3には、図2でみられたフェライト基地と炭化物からなる組織と、焼戻しマルテンサイト(白色の部分)がみられます。フェライトがみられることから、焼入温度が理想的な焼入温度に比べて低かったと考えられます。フェライトはマルテンサイトに比べて硬さがかなり低いため、焼入温度750℃のときは図2に示したように、硬さが低くなっていることがわかります。

 図4~図6は、材料メーカのカタログに掲載されている焼入温度(780℃~830℃)にほぼ含まれる温度範囲で焼入後に200℃で焼戻した試験片の金属組織です。焼戻しマルテンサイトと炭化物がみられます。焼入温度が高くなるにつれて炭化物が少なくなり、焼戻しマルテンサイトの針状の形がはっきりとみえるようになります。
図7~図9はカタログに掲載されている焼入温度より高い温度で焼入後に200℃で焼戻した試験片の金属組織です。炭化物がほとんどみられなくないことがわかります。さらに、焼入温度が高くなるにつれて、焼戻しマルテンサイトが粗大になるとともに、炭化物とは異なる形状の白い組織が多くみられるようになります。

 ここで、炭素量が多い鋼材では、焼入温度が高くなるにつれて残留オーステナイトの量が増えることが知られています。このことから、この白い組織は残留オーステナイトと考えられます。残留オーステナイトの顕微鏡観察については、文献(1)などに解説されています。

文献
(1) 和田昭三、残留オーステナイトの顕微鏡測定方法、熱処理17巻4号、1977年、205~210ページ、熱処理技術協会


 図1 熱処理前の試験片(フェライト、炭化物)  図2 熱処理後の試験片の硬さ(焼戻し:200℃に1時間保持後、空冷)
 図3 焼入れ:750℃に10分保持後、水冷
  焼戻し:200℃に1時間保持後、空冷
図4 焼入れ:775℃に10分保持後、水冷
  焼戻し:200℃に1時間保持後、空冷
 

図5 焼入れ:800℃に10分保持後、水冷
  焼戻し:200℃に1時間保持後、空冷
 図6 焼入れ:825℃に10分保持後、水冷
  焼戻し:200℃に1時間保持後、空冷
 図7 焼入れ:850℃に10分保持後、水冷
  焼戻し:200℃に1時間保持後、空冷
 図8 焼入れ:875℃に10分保持後、水冷
  焼戻し:200℃に1時間保持後、空冷

図9 焼入れ:900℃に10分保持後、水冷
  焼戻し:200℃に1時間保持後、空冷
 




 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       県央技術支援センター
         TEL 0256-32-5271



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