①完全焼鈍し(図3):大きさ1~2μm程度の細かい球状炭化物と、細かい炭化物(色が濃い部分)が見られます。硬さは198HV0.5と焼ならし後に比べて低くなっていますが、納入状態ほど低くはありません。図1に比べて図3の金属組織が硬いのは、単位面積あたりの炭化物の数が少ないと硬さが低下する(1)ためと考えられます。 |
②等温焼鈍しⅠ(図4):図3の焼鈍し①に比べて球状炭化物が大きくなっていますが、一方で細かい炭化物の密度が高まった印象を受けます。球状炭化物が大きい部分は軟らかく、細かい炭化物がある部分は硬いと考えられますが、硬さ試験による圧痕の大きさは70μm程度ですので、これらの平均的な硬さを試験していると考えられます。硬さは195HV0.5と図3の金属組織とほぼ同じとなりました。 |
③等温焼鈍しⅡ(図5):図4の焼鈍し②に比べて球状炭化物が大きくなるとともに、細かい炭化物のある部分が少なくなっています。このため、硬さは185HV0.5と図4の金属組織より10程度低くなっています。 |
④焼入れ+高温焼戻し(図6):大きさ1μm程度の細かい球状炭化物が均一に分布しています。硬さは214HV0.5とやや高くなっています。これは、細かい炭化物が均一に分布しているためと考えられます。 |
⑤焼入れ+繰返し加熱冷却Ⅰ(図7):短時間で球状化する熱処理を行った結果です。大きさ1μm程度の細かい球状炭化物が均一に分布しています。硬さは206HV0.5と図6の組織より若干低くなっています。 |
⑥焼入れ+繰返し加熱冷却Ⅱ(図8):図7の焼鈍し⑤の繰り返し加熱冷却の回数を増やした結果です。図7に比べて球状炭化物が大きくなっています。186HV0.5と図7の組より20程度低くなりました。 |
⑦上記③を2回(図9):等温焼鈍しⅡを二回行った結果です。炭化物が大きくなり、地のフェライト組織もよく見えます。しかし、細かい炭化物がある部分も若干残っています。硬さは176HV0.5と図8の組織より10程度低くなりました。 |
⑧焼入れ+変態点直下保持+上記③を3回(図10):焼入れ後に変態点直下保持と等温焼鈍しⅡを三回行ったものです。図9に比べて炭化物がさらに大きくなり、地のフェライト組織もよく見えます。細かい球状炭化物の部分はごくわずかとなり、硬さは173HV0.5となりました。 |