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新潟県工業技術総合研究所は、工業系の技術支援機関です。

Topページ > 機械・金属関係 技術トピックス  > 【県央技術トピックス】ビッカース硬さ試験とヌープ硬さ試験

【県央技術トピックス】 


1.はじめに

 一般に、ビッカース硬さ試験機は圧子を付け替えることにより、ビッカース硬さとヌープ硬さの両方を試験することができます。これら二つの試験によるくぼみを図1に示します。図1より、ビッカース硬さのくぼみは正方形で、ヌープ硬さのくぼみは細長いひし形になっていることが分かります。この違いは圧子の形状の違いによるものです。ヌープ硬さのくぼみの長手の対角線長さはビッカース硬さのくぼみの約3倍と長く、硬さの変化に敏感です。さらに、ヌープ硬さのくぼみの深さはビッカース硬さのくぼみの約1/2と小さいため、ビッカース硬さに比べてより表面に近い部分の硬さの評価に向くといえます。

 ヌープ硬さはビッカース硬さに近い値をとることが知られているので、ここでは、ビッカース硬さ基準片をビッカース硬さとヌープ硬さで比較試験した結果を紹介します。なお、この実験は平成27年11月に実施したものです。

  図1 ビッカース硬さ試験とヌープ硬さ試験による695HV1基準片のくぼみ
      (試験力9.807N、左:ビッカース、右:ヌープ)


2.試験方法

 表1に試験条件を示します。二台の試験機器それぞれについて、硬さ基準片のビッカース硬さとヌープ硬さを試験しました。試験機器ごとに試験力を一定にしました。各基準片について5点の硬さ試験を行いました。

                表1 試験条件
試験機器  ビッカース硬さ試験機
(株)ミツトヨ製 HV-115
マイクロビッカース硬さ試験機
(株)明石製作所製 MVK-G1
圧子 51576(ビッカース)
K45514(ヌープ)
34971(ビッカース)
K19796(ヌープ)
試験力 9.807N 0.9807N
基準片 (株)山本科学工具研究社製
281-573(694HV1)
281-871(508HV1)
280-644(204HV1)
(株)山本科学工具研究社製
725-269(705HV0.1)
725-172(505HV0.1)
719-792(198HV0.1)

3 実験結果

 表2にビッカース硬さ試験機による試験結果を示し、表3にマイクロビッカース硬さ試験機による試験結果を示します。いずれの試験機についても、ヌープ硬さはビッカース硬さに近い値をとっていることが確認できました。

 ただし、ヌープ硬さはビッカース硬さに比べて、ばらつきを表す標準偏差が大きい傾向がありました。この理由の一つ目としては、ヌープ硬さのくぼみは細長いため、どこまでがくぼみであるか分かりにくいことが挙げられます。二つ目としては、ヌープ硬さはビッカース硬さに比べて、硬さ値がくぼみの幅の変化に敏感であることが挙げられます。これらの二つの理由により、ヌープ硬さはビッカース硬さに比べて、測定結果にばらつきが出やすいのではないかと考えられます。

      表2 ビッカース硬さ試験機による試験結果


      表3 マイクロビッカース硬さ試験機による試験結果



文献

 (1) 小賀正樹、材料硬さ試験技術の系統化調査
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/054.pdf、16ページ



 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       県央技術支援センター   斎藤 雄治
       TEL:0256-32-5271  FAX:0256-35-7228