本文へスキップ

新潟県工業技術総合研究所は、工業系の技術支援機関です。

Topページ > 機械・金属関係 技術トピックス  > 【県央技術トピックス】ビデオ伸び計の簡易的な精度確認

【県央技術トピックス】 


1.はじめに

 材料試験機を使って試験片の引張試験を行うさい、耐力等の測定をするために試験片の変位を伸び計で測定することがあります。引張試験でよく使用する伸び計として、接触伸び計とビデオ伸び計が挙げられます。

 接触伸び計は図1左に示すように試験片に直接取り付けるもので、試験片の伸びを精度よく測定することができます。しかし、伸び計の破損を防ぐため、試験片が破断する前に取り外す必要があります。一方、ビデオ伸び計は図1右に示すように試験片の標点の間隔をビデオカメラで測定するものです。非接触で変位を測定するため接触伸び計に比べて一般的に測定精度は劣りますが、ゴムや薄板など接触伸び計では測定が困難な試験片の変位を破断まで測定することができます。

 さて、引張試験を行う際、事前に伸び計の変位の測定精度を確認したいことがあります。接触伸び計については、校正器と呼ばれる器具に伸び計を取り付けて、校正器で与えた変位と伸び計の指示値を比較することによって精度を確認します。しかし、ビデオ伸び計については、ビデオカメラが材料試験機に固定されているため、校正器を使った変位の測定は困難です。このため、ビデオ伸び計の精度を現場で簡易的に確認する方法について検討しました。ここでは、材料試験機のクロスヘッド変位の変化量だけ標点距離が変化するようなジグを使って、ビデオ伸び計の精度を簡易的に確認した事例を紹介します。なお、この実験は平成27年12月に実施したものです。

        図1 接触伸び計(左)とビデオ伸び計(右)

2.実験

 ビデオ伸び計の変位を測定するために、図2に示すようなジグを用いました。このジグは、接触伸び計の校正器のスライド部を材料試験機のチャックに取り付けられるように改造したものです。このジグをチャックに取り付けてクロスヘッドを移動させると、試験力を加えることなくジグの一部をスライドさせることができます。

 このジグを図3に示すように、材料試験機の引張チャックに把持した状態でクロスヘッドを一定速度で上昇させながら、クロスヘッド変位に対するジグのスライド量をビデオ伸び計で測定しました。実験条件は次のとおりです。

・材料試験機:インストロンジャパンカンパニィリミテッド製 万能材料試験機 5582
・ビデオ伸び計:レンズf25、画角100mm、照明アレイ500mm
・クロスヘッド移動速度:5mm/min
・サンプリング間隔:0.05s
・変位の測定範囲:0~25mm

 なお、この測定を行ったクロスヘッドの移動範囲について、クロスヘッド変位とダイヤルゲージ((株)ミツトヨ製 ダイヤルゲージ Code No. 543-474B)の指示値を比較した結果、両者は1/100mm以内で一致していることを確認しています。図4にクロスヘッド変位に対するダイヤルゲージの指示値の測定結果を示します。



図2 伸び計の精度確認のためのジグ

図3 伸び計の変位の測定
 
図4 試験機のクロスヘッド変位に対するダイヤルゲージの指示値

3 実験結果

 図5に、クロスヘッド変位に対するビデオ伸び計の変位を測定した結果を示します。この図のデータに最小二乗法を用いて当てはめた直線の勾配を求めたところ1.006となりました。このことから、ビデオ伸び計の変位はクロスヘッド変位とほぼ一致していることが分かります。このような方法を使えば、ビデオ伸び計の精度を現場で簡易的に確認できると考えます。

 
図5 試験機のクロスヘッド変位に対するビデオ伸び計の変位


文献

(1) 高久康弘、ビデオ伸び計によるひずみ測定、IIC REVIEW、No.46(2011)、pp.57~63



 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       県央技術支援センター   斎藤 雄治
       TEL:0256-32-5271  FAX:0256-35-7228