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ピクリン酸飽和水溶液を使わない旧オーステナイト結晶粒界の現出
1.はじめに
焼入れ焼戻しを行った炭素鋼や低合金鋼の旧オーステナイト結晶粒界の観察を行う際、ピクリン酸飽和水溶液をベースとした腐食液がよく用いられています。しかし、ピクリン酸は爆発性の可燃物であることから、この腐食液を使用できない場合も考えられます。ここでは、硫酸を用いた腐食液
1)
とピクリン酸飽和水溶液をベースとした腐食液で旧オーステナイト結晶粒界を現出した結果を紹介します。
2.実験
・供試材 :S45C(φ20×L20mm)
SCM435 (φ20×L20mm)
SNCM439(φ38×L10mm)
カッコ内は試料の大きさ
・実験装置:(株)東洋製作所 電気マッフル炉 KM-420
(株)ニコンインステック 倒立型金属顕微鏡 TME3000U-NR型
・熱処理 :焼入れ…850℃に15分保持後に水冷(S45C)
850℃に15分保持後に油冷(SCM435、SNCM439)
焼戻し…600℃に1時間保持後、水冷(S45C)
600℃に2時間保持後、空冷(SCM435、SNCM439)
・金属組織:試験片断面を鏡面研磨および腐食後、金属顕微鏡で観察
・腐食液 :①硫酸-アルコール溶液(H
2
SO
4
3ml、エチルアルコール 100ml)
②(株)山本科学工具研究社製 AGSエッチャント
(ピクリン酸飽和水溶液をベースとした腐食液)
※
※50℃に加熱して10分浸漬後、1%水酸化ナトリウム水溶液で中和、水洗
3.実験結果
図1にS45C、SCM435、SNCM439を腐食液①と②で旧オーステナイト結晶粒界を現出した結果を示します。図1より、腐食液①より②の方が旧オーステナイト結晶粒界がよく見えることが分かります。
また、腐食液①による結果で比較した場合、S45CはSCM435やSNCM439に比べて旧オーステナイト結晶粒界がよく見えることが分かります。
このように、硫酸-アルコール溶液はピクリン酸飽和水溶液ベースのAGSエッチャントに比べると結晶粒界が現出しにくいですが、炭素鋼でピクリン酸が使用できない場合はトライする価値があると考えられます。
図1 腐食液①と②による旧オーステナイト結晶粒界の現出結果
文献
1)日本金属学会編, 金属データブック 改訂4版, p.305, (2008), 丸善(株).
問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
県央技術支援センター 斎藤 雄治
TEL:0256-32-5271 FAX:0256-35-7228
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