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クロムモリブデン鋼(SCM435)の硬さと金属組織

1.はじめに
 クロムモリブデン鋼のSCM435は、比較的安価で焼入性が良いため、機械部品等に多く用いられています。ここでは、種々の温度で焼入れしたSCM435の試験片について、硬さと金属組織を調べた結果を紹介します。なお、この試験は平成29年5月に実施したものです。
2.実験
・試験片 :SCM435(直径20mm、厚さ20mm)
・実験装置:ヤマト科学(株) 電気マッフル炉 F0410
      PRESI社 試料研磨装置 メカテック334/ディストリテック5
      (株)明石製作所製 マイクロビッカース硬度計 MVK-G1
      (株)ニコンインステック 倒立型金属顕微鏡 TME3000U-NR型
・熱処理 :焼入れ…800~950℃の各温度に15分保持後に油冷
      焼戻し…600℃に2時間保持後、空冷
・硬さ試験:試験片断面を鏡面研磨後、マイクロビッカース硬度計で試験した(HV0.5)
・金属組織:試験片断面を鏡面研磨および腐食後、金属顕微鏡で金属組織を観察した
・腐食液 :硝酸-アルコール溶液(HNO3 3ml、エチルアルコール97ml)

3.実験結果
(1)熱処理前の試験片の硬さと金属組織
 金属組織の観察結果を図1に示します。白色のフェライトと粒状および層状のセメンタイトが見られます。硬さは約250HVです。

熱処理前の試験片の金属組織
図1 熱処理前の試験片の金属組織

(2)種々の焼入温度に対する硬さ
 800~950℃の種々の温度で焼入後に600℃で焼戻した試験片のビッカース硬さの試験結果を図2に示します。硬さは、焼入温度が850℃以上で300HV0.5程度となりましたが、焼入温度が800℃と825℃ではそれより低い値になっていることが分かります。この理由については次の(3)で説明します。

熱処理後の試験片のビッカース硬さ
図2 熱処理後の試験片のビッカース硬さ

(3)種々の焼入温度に対する金属組織
 800~950℃の種々の温度で焼入後に600℃で焼戻した試験片の金属組織の観察結果を図3~図9に示します。
 図3と図4は、SCM435の推奨焼入温度830~880℃に比べて低い温度で焼入後に600℃で焼戻した金属組織です。基地組織は焼戻しマルテンサイトですが、特に800℃で焼入れした場合において、ところどころに白色のフェライトが見られます。フェライトは焼戻しマルテンサイトに比べて軟らかい組織であるため、この範囲の焼入温度においては、図2のように硬度が低くなったと考えられます。
 図5と図6は、SCM435の推奨焼入温度で焼入後に600℃で焼戻した金属組織です。いずれも焼戻しマルテンサイトになっていますが、図6の方が組織がやや粗いことが分かります。
 図7~図9は、SCM435の推奨焼入温度に比べて高い温度で焼入後に600℃で焼戻した金属組織です。いずれも焼き戻しマルテンサイトですが、焼入温度が高くになるに従い、組織が粗くなっていることが分かります。
 一般的に焼入温度が高いと金属組織は粗くなることが知られていますが、この傾向は高温で焼戻した後にも引き継がれることがこれらの結果から分かります。組織が粗くなると、硬度が同じであっても耐衝撃性(じん性)が低下するため注意が必要です。

焼入800℃、焼戻600℃の金属組織
図3 焼入れ:800℃に15分保持後、油冷 焼戻し:600℃に2時間保持後、空冷

焼入825℃、焼戻600℃の金属組織
図4 焼入れ:825℃に15分保持後、油冷 焼戻し:600℃に2時間保持後、空冷

焼入850℃、焼戻600℃の金属組織
図5 焼入れ:850℃に15分保持後、油冷 焼戻し:600℃に2時間保持後、空冷

焼入875℃、焼戻600℃の金属組織
図6 焼入れ:875℃に15分保持後、油冷 焼戻し:600℃に2時間保持後、空冷

焼入900℃、焼戻600℃の金属組織
図7 焼入れ:900℃に15分保持後、油冷 焼戻し:600℃に2時間保持後、空冷

焼入925℃、焼戻600℃の金属組織
図8 焼入れ:925℃に15分保持後、油冷 焼戻し:600℃に2時間保持後、空冷

焼入950℃、焼戻600℃の金属組織
図9 焼入れ:950℃に15分保持後、油冷 焼戻し:600℃に2時間保持後、空冷

 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       県央技術支援センター   斎藤 雄治
       TEL:0256-32-5271  FAX:0256-35-7228