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合金工具鋼 SKD61の硬さと金属組織
1.はじめに
熱間金型用鋼SKD61は耐熱性や耐軟化性に優れる鉄鋼材料で、、プラスチック射出の成型やダイカスト金型等に使用されています。ここでは、種々の温度で焼入れしたSKD61の試験片について、硬さと金属組織を調べた結果を紹介します。トラブル調査や品質管理に役立てていただければと思います。なお、この試験は平成29年6月に実施したものです。
2.実験
・試験片 :SKD61(直径28mm、厚さ10mm)
・実験装置:(株)東洋製作所製 電気マッフル炉 KM-420
PRESI社 試料研磨装置 メカテック334/ディストリテック5
(株)明石製作所製 マイクロビッカース硬度計 MVK-G1
(株)ニコンインステック 倒立型金属顕微鏡 TME3000U-NR型
・熱処理 :焼入れ…900~1100℃の各温度に20分保持後に空冷
焼戻し…550℃に1時間保持後空冷+520℃に1時間保持後空冷
・硬さ試験:試験片断面を鏡面研磨後、マイクロビッカース硬度計で試験した(HV0.5)
・金属組織:試験片断面を鏡面研磨および腐食後、金属顕微鏡で金属組織を観察した
・腐食液 :塩化第二鉄の塩酸溶液(塩化第二鉄10g、塩酸30ml、蒸留水120ml)
3.実験結果
(1)熱処理前の試験片の硬さと金属組織
金属組織の観察結果を図1に示します。基地組織はフェライトで、細かい球状炭化物が見られます。硬さは約195HVです。
図1 熱処理前の試験片の金属組織
(2)種々の焼入温度に対する硬さ
900~1100℃の種々の温度で焼入後に550℃と520℃で焼戻した試験片のビッカース硬さの試験結果を図2に示します。実験では、焼入温度が1050℃と1100℃で640~650HVの最高硬さが得られました。
図2 熱処理後の試験片のビッカース硬さ
(3)種々の焼入温度に対する金属組織
900~1100℃の種々の温度で焼入後に550℃と520℃で焼戻した試験片の金属組織の観察結果を図3~図7に示します。
図3は900℃に対する金属組織です。灰色の基地組織は焼戻しマルテンサイトで、白っぽい粒状の組織はフェライトと考えられます。また、細かい粒は炭化物と考えられます。
図4~図7は950℃~1100℃に対する金属組織です。図3で見られたフェライト組織はありませんが、温度が高くなるとともに焼戻しマルテンサイトの組織が粗くなっていることが分かります。特に図7の1100℃に対する金属組織は焼戻しマルテンサイトがかなり粗くなっていることから、1050℃までに比べて耐衝撃性がかなり低下している可能性があります。
図3 焼入れ:900℃に20分保持後空冷 焼戻し:550℃に1時間保持後空冷+520℃に1時間保持後空冷
図4 焼入れ:950℃に20分保持後空冷 焼戻し:550℃に1時間保持後空冷+520℃に1時間保持後空冷
図5 焼入れ:1000℃に20分保持後空冷 焼戻し:550℃に1時間保持後空冷+520℃に1時間保持後空冷
図6 焼入れ:1050℃に20分保持後空冷 焼戻し:550℃に1時間保持後空冷+520℃に1時間保持後空冷
図7 焼入れ:1100℃に20分保持後空冷 焼戻し:550℃に1時間保持後空冷+520℃に1時間保持後空冷
問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
県央技術支援センター 斎藤 雄治
TEL:0256-32-5271 FAX:0256-35-7228
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