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炭素鋼S45C丸棒の中心偏析について

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1.はじめに
 一般的に、鋼材に含まれている合金元素や不純物は、程度の差こそあれ偏って分布しています。これを偏析といいます。部品・材料の断面を研磨後、薄めた塩酸や硝酸などの腐食液に浸けてマクロ組織を現出させると、偏析している部位とそうでない部位とで色の濃淡が付いて見えます。色の濃淡ができるのは、偏析している部位では金属組織が異なっているためです。
 ここでは、市販の炭素鋼S45C丸棒について、偏析している部位とそうでない部位で金属組織や合金元素の量に違いがあるかを調べたので、結果を紹介します。

2.実験
【実験方法】
 市販の機械構造用炭素鋼S45C(直径20mm、長さ20mm)を850℃に15分保持後に水冷の焼入れした後、断面を鏡面研磨および腐食(硝酸アルコール溶液 HNO3 3ml、エチルアルコール 97ml)したものを試料としました。この試料について、金属組織観察(オリンパス光学工業(株)製 金属顕微鏡 BX-60M-53MB型)および走査電子顕微鏡によるEDS分析(日本電子(株)製 走査電子顕微鏡 JSM-IT500LA)を行いました。

【実験結果】
 図1に試料をデジタルカメラで観察した画像を示します。このようなマクロ的な金属組織をマクロ金属組織と呼んでいます。図において、断面の外周部と中心部が白っぽく見えるため、これらの部位に良く焼きが入っていることが予想されます。

マクロ金属組織
図1 S45C丸棒の断面のマクロ金属組織

 次に、この試料の外周部、外周部と中心部の中間、中心部についてミクロ金属組織を観察した結果を図2に示します。図2において、外周部はマルテンサイト組織、外周部と中心部の中間はマルテンサイト組織と微細パーライト組織、中心部はマルテンサイト組織と微細パーライト組織(ごく一部)となっています。このことから、外周部と中心部は良く焼きが入っていることが確認でき、図1の予想が正しかったことが分かります。

外周部のミクロ金属組織

中間部のミクロ金属組織

中心部のミクロ金属組織
図2 S45C丸棒の断面のミクロ金属組織(上:外周部、中:外周部と中心部の中間、下:中心部)

 ここで、外周部は焼入れ時の冷却が速いため良く焼きが入るのは当然ですが、冷却が遅い中心部で良く焼きが入っているのはなぜでしょうか。これを調べるため、外周部、外周部と中心部の中間、中心部について、それぞれ三か所ずつ走査電子顕微鏡によるEDS分析を行いました。
 分析の結果、Fe、C、Si、Mnの元素が検出されたため、このうち主成分のFeと定量が難しいCを除いたSiとMnについて定量を行いました。その結果を表1に示します。EDSで得られる定量値はあくまでも目安となりいますが、中心部はSiとMnがいずれも多いことから、これらの元素が偏析していることが分かります。ここで、Mnは焼入性を高める元素で、中心部のMn量(約1.2%)は炭素鋼より焼入性の高いマンガン鋼(鋼種SMn)と同程度(1.2~1.5%)であることから、中心部に良く焼きが入ったと考えられます。
 このような内部の偏析は、単に組織の変化を生じさせるだけでなく、偏析の範囲や程度によっては内部から割れが発生することもある1)2)3)ため、注意が必要と考えます。

表1 外周部、外周部と中心部の中間、中心部のEDSによるSiとMnの定量結果(定量値は三か所の平均値、質量%)
Si Mn
外周部 0.23 0.85
外周部と中心部の中間 0.25 0.84
中心部 0.33 1.17

参考文献
1) 溶接・接合技術Q&A1000「鋼材の偏析による割れとはどのような割れですか。」
http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0040010190
2) 白岩ほか, 連続鋳造材の中心偏析および鋼塊材の偏析と異常組織, 鉄と鋼, 64-3, (1978), pp.411-419.
3) 藤木, 金属材料・部品の損傷および破損原因と対策, (2011), pp.30-31, 日刊工業新聞社.

  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター   斎藤 雄治
       TEL:0258-46-3700  FAX:0258-46-6900

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