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炭素鋼S50Cと低合金鋼SCM435の焼なまし後の金属組織と偏析について

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1.はじめに
 圧延や鍛造などの熱間加工を受けた亜共析鋼の金属組織を観察すると、フェライト組織とパーライト組織が加工方向に沿って層状に並んでいることがあります。このような組織はフェライトバンドと呼ばれています。フェライトバンドの状態は、オーステナイト域から冷却する際のA3変態点~A1変態点の温度範囲の冷却速度によって変化しますが、その生成にはP、S、Ni、Cr、Mn等の合金元素の偏析が関わっているといわれています。フェライトバンドの存在は機械的性質の方向依存性や被削性などに影響することが知られています1)
 ここでは、市販の炭素鋼S50CとSCM435の棒鋼を焼鈍したときに観察されたフェライトバンドについて、偏析の様子を分析したので結果を紹介します。

2.実験
【実験方法】
 市販の機械構造用炭素鋼S50C(□19mm、長さ20mm)と機械構造用合金鋼SCM435(φ19mm、長さ20mm)について、850℃に15分保持後に炉冷の焼なましを行い、長さ方向の断面を鏡面研磨および腐食(硝酸アルコール溶液 HNO3 5ml、エチルアルコール 100ml)したものを試料としました。図1に示す箇所について、金属組織観察(オリンパス光学工業(株)製 金属顕微鏡 BX-60M-53MB型)および走査電子顕微鏡によるEDS分析(日本電子(株)製 走査電子顕微鏡 JSM-IT500LA)を行いました。

金属組織観察および走査電子顕微鏡によるEDS分析を行った箇所
図1 金属組織観察および走査電子顕微鏡によるEDS分析を行った箇所

【実験結果】
 まず、試料の金属組織を図2に示します。図において、試料の長さ方向は横方向です。S50C、SCM435のいずれについてもフェライト組織とパーライト組織が層状になっていることから、フェライトバンドがあることが分かります。また、S50Cに比べてSCM435の方がフェライトバンドが明瞭になっていることが分かります。

S50C焼なまし後の金属組織

SCM435焼なまし後の金属組織
図2 試料の断面の金属組織(上:S50C、下:SCM435)

 次に、試料のフェライト組織とパーライト組織の各三か所について、走査電子顕微鏡によるEDS分析を行いました。S50CについてはSiおよびMn、SCM435についてはSi、Mn、CrおよびMoについて定量を行い、結果を表1に示しました。ここで、EDSで得られる定量値はあくまでも目安となります。表1より、S50C、SCM435とも定量を行ったすべての元素がパーライト組織に多く偏析していることが分かります。MnやCrが多く偏析している部位はパーライトを生成しやすい2)ことが分かっています。

表1 フェライトバンドのフェライト組織とパーライト組織の定量結果(定量値は三か所の平均値、質量%)
試料 金属組織 Si Mn Cr Mo
S50C フェライト 0.18 0.59 --- ---
パーライト 0.23 0.80 --- ---
SCM435 フェライト 0.27 0.69 0.95 0.10
パーライト 0.31 0.91 1.15 0.23

参考文献
1) 藤原ほか,特殊鋼の拡散焼鈍に関する研究(第1報),電気製鋼,33-2,(1962),pp.106-116.
2) 大沢,合せ板によるフェライトバンドの生因の研究,日本金属学会誌,25,(1961),pp.433-436.

  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター   斎藤 雄治
       TEL:0258-46-3700  FAX:0258-46-6900

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