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機械・金属関係 技術トピックス
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合金工具鋼SKS3の硬さと金属組織
1.はじめに
合金工具鋼SKS3は、SK材にクロムやタングステンを加えて耐摩耗性や耐熱性を高めた鋼材で、ゲージやプレス金型などに使用されています。ここでは、種々の温度で焼入れしたSKS3試験片の硬さと金属組織を調べた結果を紹介します。なお、この試験は平成30年6月に実施したものです。
2.実験
・試験片 :SKS3(19×19×20mm)
・実験装置:ヤマト科学(株)製 電気マッフル炉 F0410
(株)アカシ製 ロックウェル硬度計 ATK-F3000
オリンパス光学工業(株)製 金属顕微鏡 BX-60M-53MB型
・熱処理 :焼入れ…800~920℃の各温度に20分保持後に油冷
焼戻し…180℃に1時間保持後、空冷
・硬さ試験:試験片表面の酸化スケールを耐水紙やすりで落とした後、ロックウェル硬度計で試験(HRC)
・金属組織:試験片中心部を鏡面研磨および腐食して観察、腐食液には硝酸-アルコール溶液(配合:HNO
3
5ml、エチルアルコール100ml)を使用
3.実験結果
(1)熱処理前の試験片の硬さと金属組織
金属組織の観察結果を図1に示します。基地組織はフェライトで、細かい球状炭化物が見られます。硬さは約87HRBです。
図1 熱処理前の試験片の金属組織
(2)種々の焼入れ温度に対する硬さ
800~920℃の種々の温度で焼入れ後と180℃で焼戻した後の試験片のロックウェル硬さの試験結果を図2に示します。焼入れ温度が800℃と830℃で62HRCの焼戻し硬さが得られました。それより高い焼入れ温度については焼戻し硬さの低下がみられました。
図2 熱処理後の試験片のロックウェル硬さ
(3)種々の焼入れ温度に対する金属組織
800~920℃の種々の温度で焼入れ後に180℃で焼戻した試験片の金属組織の観察結果を図3~図7に示します。図3と図4は、図2で最高硬さが得られた温度以下に対する金属組織です。基地組織は焼戻しマルテンサイトで、細かい炭化物が見られます。
図5~図7は、図2で最高硬さが得られた温度より高い焼入れ温度に対する金属組織です。基地組織は焼戻しマルテンサイトですが、焼入れ温度が高くなるにしたがって粗くなっていることが分かります。特に図6と図7においては、炭化物とは異なる白い組織が多く見られることから、基地組織に相当量の残留オーステナイトが含まれていると推測されます。
図3 焼入れ:800℃に20分保持後、油冷 焼戻し:180℃に1時間保持後、空冷
図4 焼入れ:830℃に20分保持後、油冷 焼戻し:180℃に1時間保持後、空冷
図5 焼入れ:860℃に20分保持後、油冷 焼戻し:180℃に1時間保持後、空冷
図6 焼入れ:890℃に20分保持後、油冷 焼戻し:180℃に1時間保持後、空冷
図7 焼入れ:920℃に20分保持後、油冷 焼戻し:180℃に1時間保持後、空冷
問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
中越技術支援センター 斎藤 雄治
TEL:0258-46-3700 FAX:0258-46-6900
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