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トラブル事例紹介:短時間で腐食したSUS304製部品について

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1.はじめに
 当センターに、腐食環境下で使われるSUS304製の部品が短期間で腐食したので原因を調べて欲しいという相談がありました。通常のSUS304は磁石につきませんが、この部品は冷間加工で作られていないにも関わらず磁石に少しつくため、その理由も調べて欲しいとのことでした。この部品は外国で材料調達と加工が行われたものだそうです。
 当センターでこれらの原因を調べるため、成分分析と金属組織観察を行いました。その結果、成分はSUS304の規格内に入っていましたが、金属組織は通常とは異なるものが見られたので紹介します。なお、ここに掲載している内容については、相談があった企業より掲載許可を得ています。

2.部品の金属組織
 部品の断面を鏡面研磨および腐食(10%シュウ酸水溶液による電解腐食)して金属組織を観察した結果を図1に示します。図2の市販のSUS304材の金属組織と比較すると、図1の金属組織は結晶粒界が明瞭になっており、鋭敏化していることが分かります。ここで鋭敏化とは、材料中に固溶している(溶け込んでいる)クロムが、同じく固溶している炭素と反応してクロム炭化物となって結晶粒界に析出した状態をいいます。鋭敏化していると、結晶粒界に沿った腐食(粒界酸化と呼ばれます)が起こりやすくなるため、この部品は短期間で腐食したと考えられます。なお、SUS304については600~800℃の温度で10分~1時間程度さらされると鋭敏化することが分かっています。
 次に、この部品が磁石につく理由を考えてみます。図1において、材料の圧延方向(図1の横方向)に細長く黒色に見える部位は結晶粒界と比べて太く見えるため、細長い金属組織ではないかと考えられます。ここで、磁石に付く組織の候補として加工誘起マルテンサイトとデルタフェライトが挙げられますが、加工誘起マルテンサイトはこのような形に見えないため、細長く見える部位はデルタフェライトと考えられます。

短期間で腐食したSUS304製部品の金属組織
図1 短期間で腐食したSUS304製部品の金属組織
(矢印部はデルタフェライトと考えられる部位)


市販のSUS304材の金属組織の一例
図2 市販のSUS304材の金属組織の一例


3.固溶化熱処理による鋭敏化の解消とデルタフェライトの観察
 図1の細長い部位を金属組織として観察するため、この部品に固溶化熱処理(1050℃に3分保持後に水冷)を行いました。固溶化熱処理を行うことで、鋭敏化を解消し、デルタフェライトを明瞭に観察することが狙いです。
 固溶化熱処理後の部品の金属組織を図3に示します。基地の金属組織は鋭敏化が消滅して図2の金属組織と同様になりました。また、材料の圧延方向(図3の横方向)に沿って細長い組織が見られますが、これは図1で観察できなかったデルタフェライトとみられます。
 デルタフェライトは、SUS304の国産材においては見られませんが、外国の材料では本事例のように見られることがあります。このようなデルタフェライトの有無は材料の製法の違いによるものと考えられます。

図1の部品を固溶化熱処理(1050℃に3分保持後に水冷)後の金属組織
図3 図1の部品を固溶化熱処理(1050℃に3分保持後に水冷)後の金属組織
(矢印部はデルタフェライトとみられる部位)




  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター   斎藤 雄治
       TEL:0258-46-3700  FAX:0258-46-6900

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