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高硬度材の曲げ試験

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1.はじめに
 焼入れ後に低温焼戻しした鋼材などの高硬度材の強度評価に対しては、引張試験では試験片の把持が難しいため曲げ試験が便利です。曲げ試験においては、試験片は単純形状の短冊状で、試験片の把持も不要となります。曲げ試験をすることによって、破断するまでの最大試験力から曲げに対する強さが求まり、破断時の変位から曲げに対する延性が評価できます。
 ここで、「曲げ試験」は「引張試験」とは異なる試験であることに注意が必要です。一般的に、引張試験で得られる「引張強さ」と曲げ試験で得られる「曲げ強さ」は異なる値を取ります。このため、引張試験ができない材料について曲げ試験を行い、それで得られる曲げ強さを引張強さとして扱う、ということはできません。このことから、曲げ試験は強度比較のような用途で用いることが適当と考えられます。
 今回は、高硬度材の強度比較という目的で、焼入れ後に種々の温度で焼戻しした炭素工具鋼SK85の試験片の曲げ試験を行った事例を紹介します。なお、この試験は令和元年9月に実施したものです。

2.実験
【実験条件】
・試験片 :炭素工具鋼SK85、サイズ 15×100×2mm
・実験装置:ヤマト科学(株)製 電気マッフル炉 F0410
      (株)島津製作所製 万能材料試験機 AG-100KNG-M1
      (株)アカシ製 ロックウェル硬度計 ATK-F3000
・熱処理 :焼入れ…780℃に10分保持後に水冷
      焼戻し…なし、150~400℃の各温度に1時間保持後に空冷
・硬さ試験:試験片表面のロックウェル硬さ(HRC)を測定

・曲げ試験:三点曲げ、支点間距離60mm、押しジグ半径5mm、受けジグ半径15mm
      クロスヘッド変位速度5mm/min
      破断までの試験力とクロスヘッド変位(以下、変位)を計測
      試験片が破断した時点で試験終了

曲げ試験の様子
図1 曲げ試験の様子


【実験結果】
 ここでは、種々の焼戻し温度に対する試験片の曲げ試験の結果を示します。実験で行った範囲において、全ての試験片が破断しました。
 図2に試験力と変位の関係(試験力-変位線図)を示します。焼戻し温度が200℃以下では試験力と変位が直線関係になっていることから、試験片はほとんど塑性変形せず破断していると考えられます。一方、焼戻し温度が300℃以上ではある程度塑性変形してから破断していることが分かります。

曲げ試験の結果
図2 種々の焼戻し温度に対する試験片の試験力-変位線図

 図3に、種々の焼戻し温度に対する試験片のロックウェル硬さ、最大試験力および破断時の変位を示します。この図より、ロックウェル硬さについては焼戻し温度を高くするに伴い減少していくことが分かります。一方、最大試験力は焼入れ後は小さいですが、焼戻し温度を高くするに伴って大きくなり、250℃で最大値をとり、その後は小さくなっていくことが分かります。破断時の変位についても焼入れ後はきわめて小さいですが、焼戻し温度を高くするに伴って大きくなることが分かります。
 ここでは、曲げ試験による高硬度材の強度評価の事例を紹介しました。参考になれば幸いです。

曲げ試験の結果
図3 種々の焼戻し温度に対する試験片の最大試験力と破断時の変位


  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
        中越技術支援センター   斎藤 雄治
        TEL:0258-46-3700   FAX:0258-46-6900

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