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新潟県工業技術総合研究所は、工業系の技術支援機関です。


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非接触による表面粗さ測定

1.はじめに
 工業製品の表面は、目的や用途に応じて様々な状態に仕上げられており、仕上げ面の光沢や手触り(つるつる、ざらざら)の違いは表面粗さの違いとして現れます。
 表面粗さの測定方法は大きく分けて接触式と非接触式の二つがあります。接触式はJIS(日本産業規格)で規定されている方法で、ダイヤモンド製の触針で表面の細かい凹凸をなぞり、得られた断面曲線から表面粗さを求めます。この方法はノイズを拾いにくいため、表面の細かい凹凸を断面曲線に正確に反映することができますが、触針でなぞったときに表面の凹凸が変形しない(剛性をもっている)ことが求められます。したがって、接触式は金属、ガラス、セラミックスなど高硬度材料の測定に向いています。
 一方、非接触式は表面に光を照射して得られる情報から面形状を取得して表面粗さを求めます。このため、透明な試料やノイズを拾いやすい鏡面試料の測定は困難ですが、軟質材料でも傷つけずに測定できます。
 さて、中越技術支援センターに導入された(株)キーエンス製 VR-3200は、非接触式で表面粗さを測定する機能を持っています。今回は、この測定機で粗さ値が分かっている粗さ標準片を測定し、非接触式のレーザー顕微鏡や接触式の粗さ測定機で測定した結果と比較しました。

2.測定
【測定方法】
 測定試料は三種類の(株)ミツトヨ製の粗さ標準片です。これらの標準片について、接触式と非接触式の測定機により表面粗さを測定しました。測定試料の粗さ値と用いた測定機を次に示します。

・測定試料:粗さ標準片ア(粗さ値:Ra0.42、Ry1.6)
      粗さ標準片イ(粗さ値: Ra1.00、Rz3.2)
      粗さ標準片ウ(粗さ値:Ra2.91、Ry11.2) (単位:μm)
      旧JIS表記のもので、現行JISのRzに相当

・測定機 :接触式 (株)ミツトヨ製 形状粗さ測定機 CS-5000CNC
      非接触式 (株)キーエンス製 3D形状測定機 VR-3200
      非接触式 オリンパス(株) 製 3Dレーザー顕微鏡 OLS4100-SAT

 ここで、測定試料のうちVR-3200では測定できない試料があったため、VR-3200については粗さ標準片から採取したレプリカ(丸本ストルアス(株)製レプリセット T3)を測定しました。また、OLS4100-SATについてもVR-3200の測定結果と比較するためレプリカを測定しました。表面粗さの評価条件を表1に示します。各試料について、接触式のCS-5000CNCについては1回、非接触式のVR-3200とOLS4100-SATについては5回測定し、平均とばらつきを表すt分布の95%信頼限界を求めました。

表1 評価条件
条件接触式
CS-5000CNC
非接触式
VR-3200
非接触式
OLS4100-SAT
λC(mm)アおよびイ 0.8、ウ 2.5
λS(μm)アおよびイ 2.5、ウ 8なし
評価長さ(mm)λCの5倍

【測定結果】
 測定した粗さ曲線の一例を図1~3に示します。図1は各測定機による粗さ標準片アの粗さ曲線です。接触式のCS-5000CNCと非接触式のOLS4100-SATの曲線はほぼ同じ波形を示していますが、非接触式のVR-3200の曲線は不規則な波形になっています。このことから、VR-3200ではこの試料の測定は難しいことが分かります。

ア(粗さ値: Ra0.42、Ry1.6)の粗さ曲線
図1 粗さ標準片ア(粗さ値:Ra0.42、Ry1.6)の粗さ曲線

 図2は各測定機による粗さ標準片イの粗さ曲線です。図1と同様に接触式のCS-5000CNCと非接触式のOLS4100-SATの曲線はほぼ同じ波形を示しています。さらに、CS-5000CNCの曲線に見られる細かい波形はOLS4100-SATでも見られることが分かります。 一方、非接触式のVR-3200の曲線は周期的になっていますが、波形は他の測定機の曲線と大きく異なっていることが分かります。

イ(粗さ値:Ra1.0、Rz3.2)の粗さ曲線
図2 粗さ標準片イ(粗さ値:Ra1.00、Rz3.2)の粗さ曲線

 図3は各測定機による粗さ標準片ウの粗さ曲線です。図1、図2と同様に接触式のCS-5000CNCと非接触式のOLS4100-SATの曲線はほぼ同じ波形を示しています。一方、非接触式のVR-3200の曲線も他の測定機の曲線にかなり近づいていることが分かります。

ウ(粗さ値:Ra2.91、Ry11.2)の粗さ曲線
図3 粗さ標準片ウ(粗さ値:Ra2.91、Ry11.2)の粗さ曲線

 表2~表4に、測定で得られた粗さ標準片およびそのレプリカの表面粗さRa、Rzを示します。表2~4の結果より、接触式については全ての標準片で粗さ値に近い値を取っていることが分かります。一方、非接触式については、Raは全ての標準片のレプリカで粗さ値に近い値を取っていますが、Rzは標準片アのレプリカでOLS4100-SATの結果が近く、標準片ウのレプリカでVR-3200の結果が近いことが分かります。

表2 粗さ標準片ア(粗さ値:Ra0.42、Ry1.6)およびそのレプリカの表面粗さ
測定機接触/非接触標準片/レプリカRa(μm)Rz(μm)
CS-5000CNC接触式標準片0.391.55
VR-3200非接触式レプリカ0.37±0.083.56±0.61
OLS4100-SAT非接触式レプリカ0.38±0.031.59±0.25

表3 粗さ標準片イ(粗さ値:Ra1.00、Rz3.2)およびそのレプリカの表面粗さ
測定機接触/非接触標準片/レプリカRa(μm)Rz(μm)
CS-5000CNC接触式標準片0.993.25
VR-3200非接触式レプリカ0.91±0.054.12±0.08
OLS4100-SAT非接触式レプリカ1.00±0.043.84±0.84

表4 粗さ標準片ウ(粗さ値:Ra2.91、Ry11.2)およびそのレプリカの表面粗さ
測定機接触/非接触標準片/レプリカRa(μm)Rz(μm)
CS-5000CNC接触式標準片2.8811.05
VR-3200非接触式レプリカ2.56±0.0510.63±0.27
OLS4100-SAT非接触式レプリカ2.83±0.1213.39±1.29

4.終わりに
 今回測定を行った範囲については、粗さ値が小さい試料では細かい凹凸の測定が可能なOLS4100-SATが適しており、粗さ値が大きい試料では大変位の測定が可能なVR-3200が適していると考えられます。

  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
        中越技術支援センター   斎藤 雄治
        TEL:0258-46-3700   FAX:0258-46-6900