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焼入れ、焼戻し、納入時の鋼材のディープラーニングによる金属組織の識別

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1.はじめに
 特殊鋼には構造用鋼(S--C、SCrなど)、工具鋼(SK、SKDなど)、特殊用途鋼(SUS、SUJなど)がありますが、その中では構造用鋼が最も多く使われています。今回は、機械構造用炭素鋼S50Cと機械構造用合金鋼SCM435について、納入時、焼入れ後、焼入れ焼戻し(調質)後の金属組織をディープラーニングで認識させました。この実験は令和2年7月に行ったものです。

2.実験
 機械構造用炭素鋼S50C(大きさ□19mm×厚さ20mm)と機械構造用合金鋼SCM435(大きさφ19mm×長さ20mm)について、表1のように納入状態、焼入れ、焼入れ焼戻しの三種類の試料を作製しました。

表1 試料の熱処理
鋼種 熱処理
S50C 納入状態
焼入れ
 850℃×15分保持後水冷
焼入れ焼戻し
 850℃×15分保持後水冷、600℃×1時間保持後水冷
SCM435 納入状態
焼入れ
 850℃×15分保持後油冷
焼入れ焼戻し
 850℃×15分保持後油冷、600℃×1時間保持後水冷

 これらの試料について、端面を鏡面研磨および腐食(HNO3 5ml、エチルアルコール100ml)後、各試料につき100枚ずつ金属組織を撮影しました。全ての金属組織は同一倍率で撮影しました。熱処理にはヤマト科学(株)製 F0410を用いて、金属組織の撮影にはオリンパス光学工業(株)製のBX-60M-53MBに付属するデジタルカメラを用いました。
 各試料について撮影した金属組織画像を学習用(train)の画像80枚と検証用(validate)の画像20枚に分け、学習済みモデルVGG16を用いて転移学習および検証を行いました。入力画像のサイズは224×224ピクセルです。学習に用いた画像は表2の条件で水増しを行いました。

表2 画像の水増しの設定
設定項目 設定内容
画像の回転 0~40deg
水平・垂直方向反転 あり

3.実験結果
 各試料の金属組織を図1~6に示します。図1~3はS50Cの金属組織です。図1はフェライトとパーライト組織、図2はマルテンサイト組織、図3は焼戻しマルテンサイト組織になっています。図4~6はSCM435の金属組織です。図4はフェライトとパーライト組織、図5はマルテンサイト(白)とベイナイト組織(黒)1)、図6は焼戻しマルテンサイト組織になっています。

S50C納入状態
図1 S50C納入状態

S50C焼入れ
図2 S50C焼入れ

S50C焼入れ焼戻し
図3 S50C焼入れ焼戻し

SCM435納入状態
図4 SCM435納入状態

SCM435焼入れ
図5 SCM435焼入れ

SCM435焼入れ焼戻し
図6 SCM435焼入れ焼戻し

 これらの金属組織について、学習用のデータで繰り返し学習させながら、各学習回数において学習データおよび検証データを使って6種類の金属組織を認識させたときの正解率を図7に示します。学習回数が進むにつれて、学習データは98~99%の正解率に達し、検証データは95~98%の正解率に達することが分かります。
画像認識の正解率
図7 画像認識の正解率

参考文献
1) 佐藤知雄編,改訂増補版 鉄鋼の顕微鏡写真と解説,1973年,114~115ページ,丸善.

  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
        中越技術支援センター   斎藤 雄治
        TEL:0258-46-3700   FAX:0258-46-6900

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