ゴムやプラスチック材料の硬さ試験
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ゴムやプラスチック材料の硬さ試験

1.はじめに
 硬さ試験は材料の簡易的な強度試験としてよく行われています。硬さ試験には、押込み硬さ、引っかき硬さ、反発硬さといった各種試験方法があります。ゴムやプラスチック材料に対しては押込み硬さ試験に分類されるロックウェル硬さ試験やデュロメータ硬さ試験がよく用いられるため、今回はロックウェルとデュロメータの硬さ試験について概要や注意点を説明します。

2.ロックウェル硬さ試験
 ロックウェル硬さ試験機の外観を図1に示します。プラスチック材料に対するロックウェル硬さ試験方法はJIS K 7202-21)で規定されています。試験の原理は、金属材料に対するロックウェル硬さ試験を規定したJIS Z 22452)と同じで、圧子を介して基準荷重を加えた後、さらに試験荷重を加え、次に基準荷重に戻したときのくぼみ深さの増加量として硬さを求めます。
 ここで、ロックウェル硬さ値${\rm HR}$は次式で定義されます。
\[ {\rm HR}=130-\frac{h}{0.002} \tag{1} \] 式(1)において、$h$は試験荷重除去後のくぼみの深さ(単位mm)です。
 ロックウェル硬さ試験では、試験荷重や圧子の組み合わせをスケールと呼んでいます。プラスチック材料に対しては表1に示すように、試験荷重は588.4および980.7N、圧子は鋼球(直径12.7、6.35および3.175mm)が規定されています。プラスチックのロックウェル硬さ値は${\rm HR}$にスケールを付けて表記します。例えば、Mスケールで値が80であった場合、HRM80と表記します。硬さ値については50~115の間にあることが望ましく、範囲外の場合には適切なスケールで再測定することが規定されています。
 ここで、試験片および測定点については次の規定があります。

・厚さ:6mm以上
・試験片の辺縁からの測定点までの距離:10mm以上
・測定点数:5点以上
・測定点の間隔:10mm以上

これより、試験片にはある程度の大きさ(50mm×50mm×厚さ6mm程度)が必要であることが分かります。
 なお、ロックウェル硬さ試験は変位を測定するため、試験片の裏面に凹凸や汚れがあると硬さ値が低くなる傾向があるので注意が必要です。

ロックウェル硬さ試験機の外観
図1 ロックウェル硬さ試験機の外観

表1 プラスチックに対するロックウェル硬さのスケール、基準荷重、試験荷重および鋼球圧子の直径の関係
スケール基準荷重(N)試験荷重(N)鋼球圧子の直径(mm)
R98.07588.412.7
L6.35
M980.7
E*3.175
* Eスケールは校正だけに用いる

3.デュロメータ硬さ試験
 デュロメータの外観を図2に示します。デュロメータ硬さ試験方法は、ゴム材料に対してはJIS K 6253-33)で、プラスチック材料に対してはJIS K 72154)で、それぞれ規定されています。デュロメータ硬さは、規定された条件で試験片に押針を押し込んだときの押込み深さから得られます。ここで、デュロメータ硬さ値${\rm HD}$は次式で定義されます。
\[ {\rm HD}=100-40h \tag{2} \] 式(2)において、$h$は押針の押込み深さ(単位mm)です。
 デュロメータには押針やスプリングの力の違いにより、A、D、EおよびAMの4つのタイプがあり、これらの使い分けは次のように規定されています。

・タイプDで硬さが20未満の場合、タイプAを用いる
・タイプAで硬さが20未満の場合、タイプEを用いる
・タイプAで硬さが90を超える場合、タイプDを用いる
・薄い試験片(厚さ6mm未満)の場合、タイプAMを用いる
※プラスチック材料に対しては、タイプAおよびDを用います。

 デュロメータ硬さは、ゴムとプラスチックで表記が異なります。ゴムの場合はタイプ名を付けて表記します(例:タイプEで値が60の場合、E60)。プラスチックの場合はHDにタイプ名を付けて表記します(例:タイプDで値が50の場合、HDD50)。
 ここで、試験片および測定点については次の規定があります。

・厚さ:6mm以上(タイプA、D)
    10mm以上(タイプE)
    1.5mm以上(タイプAM)
    ※厚さが足りない場合は3枚以内で積み重ねてもよい
・試験片の辺縁からの測定点までの距離:
    12mm以上(タイプA、D)
    15mm以上(タイプE)
    4.5mm以上(タイプAM)
・測定点を中心として平滑な表面になっている範囲:
    半径6mm以上(タイプA、D)
    半径9mm以上(タイプE)
    半径2.5mm以上(タイプAM)
・測定点数:5点
・測定点の間隔:6mm以上(タイプA、D、E)
        0.8mm以上(タイプAM)

これより、デュロメータ硬さ試験の試験片についてもある程度の大きさ(タイプAの場合、30mm×30mm×厚さ6mm程度)が必要であることが分かります。

デュロメータの外観
図2 デュロメータの外観(左:タイプA、右:タイプD)

4.おわりに
 ゴムやプラスチックの硬さ試験については、試験面が広くて厚い試験片が必要になります。小さい試験片しか用意できない場合、試験片への圧子や押針の押込みが正しくできないため、硬さ値がばらついたり、予想とは異なる硬さ値になるので、ご注意ください。
 なお、中越技術支援センターにはロックウェルのRスケールとデュロメータのタイプA、タイプDがあります。ぜひご利用ください。

参考文献
1) JIS K 7202-2(2001) プラスチック-硬さの求め方-第2部:ロックウェル硬さ.
2) JIS Z 2245(2018) ロックウェル硬さ試験-試験方法.
3) JIS K 6253-3(2012) 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ.
4) JIS K 7215(1986) プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法.

  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
        中越技術支援センター   斎藤 雄治
        TEL:0258-46-3700   FAX:0258-46-6900