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合金工具鋼 SKD11の硬さと金属組織(高温焼戻し)

1.はじめに
 前回は、SKD11を180℃で焼戻したときの硬さと金属組織のデータを紹介しました。しかし、実際の冷間加工用の金型は操業時に被加工物からの熱を受けるため、被加工物の温度より高温での焼戻しが必要になってきます(1)。このため、今回はSKD11を高温(520℃)で戻した場合の硬さと金属組織を調べてみました。なお、この試験は平成29年6月に実施したものです。

2.実験
・試験片 :SKD11(前回と同じ試料、直径32mm、厚さ10mm)
・実験装置:(株)東洋製作所製 電気マッフル炉 KM-420
      PRESI社 試料研磨装置 メカテック334/ディストリテック5
      (株)明石製作所製 マイクロビッカース硬度計 MVK-G1
      (株)ニコンインステック 倒立型金属顕微鏡 TME3000U-NR型
・熱処理 :焼入れ…900~1100℃の各温度に20分保持後に空冷
      焼戻し…520℃に1時間保持後に空冷を2回
・硬さ試験:試験片断面を鏡面研磨後、マイクロビッカース硬度計で試験した(HV0.5)
・金属組織:試験片断面を鏡面研磨および腐食後、金属顕微鏡で金属組織を観察した
・腐食液 :塩化第二鉄の塩酸溶液(塩化第二鉄10g、塩酸30ml、蒸留水120ml)

3.実験結果
(1)種々の焼入温度に対する硬さ
 900~1100℃の種々の温度で焼入後に520℃で2回焼戻した試験片のビッカース硬さの試験結果を図1に示します。焼入温度が1050℃で750HVの最高硬さとなりました。また、焼入温度が1100℃では硬さの低下がみられました。

熱処理後の試験片のビッカース硬さ
図1 熱処理後の試験片のビッカース硬さ

(2)種々の焼入温度に対する金属組織
 900~1100℃の種々の温度で焼入後に520℃で2回焼戻した試験片の金属組織の観察結果を図2~図6に示します。
 図2~図5は、900~1050℃に対する金属組織です。基地組織は焼戻しマルテンサイトで、細かい炭化物と塊状の炭化物が見られます。焼入れ温度が高くなるにつれて、白く見える細かい炭化物が少なくなっていることが分かります。
 図6は、1100℃に対する金属組織です。基地組織は図2~図5とは異なり、粗くなっていることが分かります。

焼入900℃、焼戻520℃を2回の金属組織
図2 焼入れ:900℃に20分保持後に空冷 焼戻し:520℃に1時間保持後に空冷を2回

焼入950℃、焼戻520℃を2回の金属組織
図3 焼入れ:950℃に20分保持後に空冷 焼戻し:520℃に1時間保持後に空冷を2回

焼入1000℃、焼戻520℃を2回の金属組織
図4 焼入れ:1000℃に20分保持後に空冷 焼戻し:520℃に1時間保持後に空冷を2回

焼入1050℃、焼戻520℃を2回の金属組織
図5 焼入れ:1050℃に20分保持後に空冷 焼戻し:520℃に1時間保持後に空冷を2回

焼入1100℃、焼戻520℃を2回の金属組織
図6 焼入れ:1100℃に20分保持後に空冷 焼戻し:520℃に1時間保持後に空冷を2回


文献
(1)日原政彦、金型の品質向上のための材料選択と事例、2014年、日本工業出版、76-77ページ。

 問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       県央技術支援センター   斎藤 雄治
       TEL:0256-32-5271  FAX:0256-35-7228