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機械・金属関係 技術トピックス
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デルタフェライトの見られたSUS304部品の各組織中の合金元素について
1.はじめに
前回紹介したSUS304製部品の金属組織
1)
には、オーステナイトの他に少量のデルタフェライトが見られました。このデルタフェライトは凝固時にできたと考えられます。
ここで、溶融金属が凝固する際、溶融している合金元素は偏析する(偏った分布になる)ことが知られています。SUS304に多く含まれているクロム(Cr)はフェライト生成元素で、ニッケル(Ni)はオーステナイト生成元素です。このため、デルタフェライトがある部位はCrが多く偏析していることが考えられます。
このことを確認するため、今回はSUS304製部品の金属組織について、オーステナイトとデルタフェライトを走査型電子顕微鏡でEDS元素分析(エネルギー分散型X線分析)したので、その結果を紹介します。
2.分析結果
前回、金属組織観察を行った試料について、電子顕微鏡による観察とEDS分析を行いました。試験機器には最近当所に導入された日本電子(株)の走査型電子顕微鏡 JSM-IT500LAを用いました。
図1に固溶化熱処理後のSUS304製部品の金属組織の電子顕微鏡像を示します。図において、基地組織はオーステナイトで、細長い組織はデルタフェライトです。図中のオーステナイトとデルタフェライトについて各二か所(①、②)EDS分析を行いました。
EDSによる定性分析チャートを図2と図3に示します。図2はオーステナイトの結果で、図3はデルタフェライトの結果です。図において、元素記号は検出された元素の種類を表し、各元素が検出された山(ピーク)の高さは元素の量に関係します。図2と図3において、横軸が同じ位置にある元素のピークで比較すると、横軸の値が5.4keV付近のCrKaのピークは図3の方が高く、横軸の値が7.4keV付近のNiKaのピークは図3の方が低くなっています。このことから、デルタフェライトはオーステナイトに比べてCrが多く、Niが少ないことが分かります。
図2と図3の定性分析チャートからCrとNiを定量した結果を表1に示します。表中の定量値は、オーステナイト、デルタフェライトとも二か所(①と②)の平均を取ったものです。EDSで得られる定量値はあくまでも目安となりますが、デルタフェライト組織にはCrが多くNiが少なく偏析していることが確認できました。
図1 固溶化熱処理後のSUS304製部品の金属組織
図2 図1のオーステナイト組織①②のEDSによる分析チャート(上:①、下:②)
図3 図1のデルタフェライト組織①②のEDSによる分析チャート(上:①、下:②)
表1 オーステナイト組織とデルタフェライト組織のCrとNiのEDSによる定量結果(定量値は①と②の平均、質量%)
オーステナイト組織
デルタフェライト組織
Cr
Ni
Cr
Ni
18.5
7.8
23.9
4.0
参考文献
1) トラブル事例紹介:短時間で腐食したSUS304製部品について
http://www.iri.pref.niigata.jp/topics/H30/30kin7.html
問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
中越技術支援センター 斎藤 雄治
TEL:0258-46-3700 FAX:0258-46-6900
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