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画像処理による鋼の結晶粒度の測定について(計数結果の訂正機能の付加)

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1.はじめに
 前回1)、画像処理を使った結晶粒度の測定について紹介しました。この方法では、結晶粒界が明瞭で、かつ、粒内の腐食ピット等が軽微な組織画像を測定に用いることが肝要ですが、実際にはそうした画像がない場合も想定されます。このため、今回は計数結果を手動で訂正する機能を付加して、より多くの組織画像に対応できるよう改良しました。この実験は令和2年9月に行ったものです。

2.画像処理による結晶粒界の計数
 ここでは、画像処理を用いた結晶粒界の計数方法について説明します。プログラムはPython(バージョン3.7.4)で作成し、画像処理にはOpenCV(バージョン4.1.2)を用いています。ここで、前回1)作成したプログラムの主な流れは次のとおりです。

1.ファイル選択ダイアログを表示して組織画像を選択・読み込みを行います。ファイルはカラーとグレースケールの二通りで読み込みます。グレースケールで読み込む画像は画像処理に使用し、カラーで読み込む画像は結果の表示に使用します。
2.グレースケールで読み込んだ画像に対して、白黒反転した二値化処理(大津の二値化)を行います。その後、画像について輪郭検出を行い、その中であらかじめ決めた大きさ*より小さい輪郭を黒く塗りつぶして、結晶粒内の腐食ピットなどの除去を行います。
*ここでは、画像幅の5/142(画像幅142mmに対して5mmの大きさ)としました。
3.上記2の画像に対して、画像の中心を円の中心にとった三つの同心円(直径79.58mm、53.05mmおよび26.53mm同心円)の円周上に相当する位置の画素値を調べ、画素値が255(白色)となる位置を結晶粒界として計数します。
4.最後に、カラーで読み込んだ画像に試験線や計数した粒界の位置を描画し、ターミナルにファイル名や計数値を出力します。任意キーを押すとプログラムは終了します。

今回は、このプログラムに以下の機能を追加しました。

5.上記3の計数の際、結晶粒界ごとに番号を付けて座標値を管理します。座標値のデータはディクショナリ型で管理しました。
6.上記4の出力画像に対して、粒界の追加をマウスの右クリック、削除をマウスの左クリックで行えるようにします。また、画面の左上に現在の粒界の計数値を表示します。任意のキーを押すと、表示されている画像と上記2の画像が自動保存されてプログラムは終了します。なお、試験線から外れた位置では粒界を追加できないようにしています。

 改良したプログラムによる結果を示します。
 画像処理には図1の組織画像を用いました。図1は、焼入れ焼戻しした機械構造用合金鋼SCM435の旧オーステナイト結晶粒界を専用の腐食液((株)山本科学工具研究社製 AGS)で現出したものです。前回1)の組織画像に比べて、結晶粒界が細く、素地組織の腐食も多いことが分かります。なお、この画像は幅を142mmとしたときに倍率500倍になります。
 図1の組織画像に対して、画像処理による結晶粒界の計数結果を図2に示します。左上に粒界数が表示されていますが、粒界の計数方法は前回と同じです。誤って計数された粒界がかなりあることが分かります。なお、図2において三つの同心円は、画像の幅を142mmとしたときに、直径が79.58mm、53.05mmおよび26.53mmとなるように描画しています。
 最後に、今回追加した機能を使って、図2を手動で訂正した結果を図3に示します。図3の結果には主観が含まれていることに注意してください。この試料について同様な方法で5視野の粒界の計数結果は78、78、76、84、72で、これらの平均値は77.6となりました。ここで、図3の試験線の実倍率(500倍)における長さは1mmとなるため、試験線1mm当たりの平均捕捉結晶粒数は77.6となり、JIS G0551(2020) 鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法2)の表A.1より粒度番号は9となります。今回は、前回1)の試料を焼戻して観察しているため、前回と変わらない結晶粒度となりました。

結晶粒界を現出させた組織画像
図1 結晶粒界を現出させた組織画像(SCM435、焼入れ850℃・焼戻し600℃、腐食液AGS)

自動による計数結果
図2 自動による計数結果

手動による訂正結果
図3 手動による訂正結果


文献
1) 画像処理による鋼の結晶粒度の測定についてhttp://www.iri.pref.niigata.jp/topics/R2/2kin16.html
2) 日本規格協会, JIS G0551(2020) 鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法.


  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
        中越技術支援センター   斎藤 雄治
        TEL:0258-46-3700   FAX:0258-46-6900

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