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新潟県工業技術総合研究所は、工業系の技術支援機関です。


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固溶化および鋭敏化熱処理後のSUS304ステンレス鋼の金属組織

1.はじめに
 前回のトピックでは、固溶化および鋭敏化の熱処理を行ったSUS304丸棒の試料をJIS G0571-2003の条件でエッチングして組織観察しました。ここで、JIS G0571-2003のエッチング条件は、通常の組織観察でのエッチング条件に比べ高電流かつ長時間となるため、観察される組織も通常のものとは異なっています。今回は、前回の実験で用いた試料について、通常の条件でエッチングして金属組織を観察しました。この実験は令和2年4月に行ったものです。

2.実験
 前回使用した次の試料を再研磨およびエッチングして金属顕微鏡で観察しました。

  試料A:未熱処理
  試料B:固溶化熱処理 1100℃に15分保持後、水冷
  試料C:700℃に10分保持後、空冷
  試料D:700℃に30分保持後、空冷
  試料E:700℃に1時間保持後、空冷
  試料F:700℃に2時間保持後、空冷
  試料G:700℃に4時間保持後、空冷

金属顕微鏡にはオリンパス光学工業(株)製のBX-60M-53MBを用いて、エッチングは10%しゅう酸水溶液中にて電流密度0.6A/cm2で30秒間1)行いました。

3.実験結果
 図1~7に各試料の金属組織を示します。各図は幅88mmに表示したとき倍率200倍の大きさとなります。
 図1と図2に示した試料AとBの組織はいずれもオーステナイトですが、試料Aには黒い点が多く見られることが分かります。ここで、黒い点は介在物や炭化物と考えられますが、固溶化熱処理によりかなり少なくなることから、黒い点の多くは炭化物と推定されます。
 図3~図7に示した試料C~Gの組織はいずれも鋭敏化していることが分かります。保持時間が長い試料ほど結晶粒界が明瞭になっていることから、鋭敏化が進んでいることが分かります。

試料A
図1 試料A(未熱処理)の金属組織

試料B
図2 試料B(固溶化熱処理)の金属組織

試料C
図3 試料C(700℃10分)の金属組織

試料D
図4 試料D(700℃30分)の金属組織

試料E
図5 試料E(700℃1時間)の金属組織

試料F
図6 試料F(700℃2時間)の金属組織

試料G
図7 試料G(700℃4時間)の金属組織

文献
(1) 標準顕微鏡組織 第3類,(株)山本科学工具研究社,2001年,14~16ページ.

  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
        中越技術支援センター   斎藤 雄治
        TEL:0258-46-3700   FAX:0258-46-6900