今回は、機械学習のツール「Teachable Machine1)」を用いた金属組織画像の結晶粒度(粒度番号)の評価方法を紹介します。Teachable Machineはウェブ上で短時間に簡単に機械学習モデルが作成できるGoogleのツールです。作成したモデルはウェブに公開したり、他のアプリで利用することができます。
本トピックスの2.に、作成したTeachable Machineモデルに組織画像を読み込ませて粒度番号を求める手順を示し、3.に、このモデルとKeras VGG16モデル2)、およびJIS G0551比較法3)によって粒度番号を求めて比較した結果を示します。この実験は令和4年1月に行ったものです。
②リンク先で次のように設定します。
・カメラの使用は「ブロック」(画面に表示された場合のみ)
・Inutは「ON」に
・「Webcam」を「File」に
③組織画像を読み込みます。
「Choose images from your files, or drag & drop here」の枠内をクリックして組織画像を選択するか、枠内に画像をドロップすると、画像とその判定結果が表示されます。ここでは、Outputの0.0~8.0で最もパーセント値が高いものを判定結果とします。
④上記③の判定結果について、組織画像の「撮影倍率」、撮影倍率で表示した組織画像の「短辺の幅」を使って補正します。これらの値と上記③の判定結果を次の欄に入力して「粒度番号の補正」をクリックすると、粒度番号の補正値が表示されます。これが組織画像の粒度番号になります。
3.Teachable MachineモデルとKeras VGG16モデルの結果比較 |
鋼種・熱処理・撮影倍率の異なる組織画像(各20枚)に対して、上記のTeachable Machineモデル、Keras VGG16モデル、JIS G0551比較法によって粒度番号の平均値とそのばらつきを求めて比較しました。VGG16モデルの学習条件は文献4)とほぼ同じで、データセットはTeachable Machineモデルの学習と同じものを用いています。
表1に結果を示します。表1において、粒度番号は平均値±95%信頼限界(t分布)で表しています。Teachable MachineモデルとVGG16モデルの粒度番号の平均値はばらつきの範囲内でJIS G0551比較法の粒度番号の平均値とほぼ一致しており、比較に用いた組織画像に対してTeachable MachineモデルとVGG16モデルは実用的なモデルになっていると考えられます。
表1 熱処理した鋼材の組織画像(20枚)の粒度番号の平均値とその95%信頼限界
鋼種 |
熱処理 |
撮影倍率 |
粒度番号 |
Teachable
Machine
モデル |
VGG16
モデル |
JIS G0551
比較法 |
SUS304 |
鋭敏化 |
200 |
9.9±0.5 |
9.5±0.4 |
9.4±0.4 |
500 |
9.1±0.2 |
9.3±0.6 |
9.4±0.5 |
SCM435 |
焼入れ |
500 |
9.6±0 |
9.2±0.4 |
9.8±0.5 |
1000 |
10.1±0.2 |
9.6±0.2 |
9.9±0.5 |
焼入れ
焼戻し |
500 |
10.3±1.1 |
9.9±0.6 |
9.8±0.6 |
1000 |
10.9±0.8 |
10.0±0.4 |
10.1±0.5 |
SUJ2 |
焼入れ
焼戻し |
500 |
10.7±0.5 |
10.2±0.6 |
10.6±0.8 |
1000 |
11.2±0.4 |
10.3±0.6 |
10.5±0.6 |
今回は、Teachable Machineを使って、ウェブ上での鋼の結晶粒度の評価を試みました。評価に用いた組織画像に対して得られた粒度番号の平均値は、VGG16モデルやJIS G0551の比較法とばらつきの範囲内でほぼ一致する結果が得られました。
3) 日本規格協会, JIS G0551(2020) 鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法
問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
中越技術支援センター 斎藤 雄治
TEL:0258-46-3700 FAX:0258-46-6900 |