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SUS430の鋭敏化組織の観察(腐食液による違い)

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1.はじめに
 前回のトピック「フェライト系ステンレス鋼SUS430の鋭敏化について」1)では、鋭敏化させたSUS430の金属組織を「塩酸-ピクリン酸-アルコール溶液」で腐食して顕微鏡で観察しました。
 ここで、約2年前のトピック「各種腐食液によるステンレス鋼の金属組織観察」2)のSUS430やSUS420J2の結果を見ると、「シュウ酸水溶液」で腐食すると基地組織は観察できませんが炭化物は観察できることが分かります。このことに加えて、マルテンサイト系ステンレス鋼の炭化物を「シュウ酸水溶液」で腐食して顕微鏡で観察した事例3)4)もあることから、「シュウ酸水溶液」はフェライト系やマルテンサイト系の炭化物の観察に向いていることが考えられます。
 そこで今回は、前回の鋭敏化したSUS430について、「シュウ酸水溶液」で腐食して金属組織を観察したので、結果を紹介します。

2.実験
【実験方法】
 前回1)、金属組織観察を行った試料について、鏡面研磨およびシュウ酸水溶液(シュウ酸10g、蒸留水100ml、以降、シュウ酸と呼びます)による電解腐食後に金属顕微鏡(オリンパス光学工業(株)製 金属顕微鏡 BX-60M-53MB型)で観察しました。

【実験結果】
 以下の結果については、前回の塩酸-ピクリン酸-アルコール溶液(以降、塩酸-ピクリン酸と呼びます)で腐食した結果も比較のために示します。
 図1に鋭敏化処理前(納入状態)のSUS430の金属組織を示します。シュウ酸を用いると、フェライトの結晶粒は識別できませんが、炭化物は明瞭に見えることが分かります。一方、塩酸-ピクリン酸で腐食すると、炭化物とフェライト結晶粒のいずれも識別することができます。

鋭敏化処理前のSUS430の金属組織

鋭敏化処理前のSUS430の金属組織
図1 鋭敏化処理前のSUS430の金属組織(上:シュウ酸、下:塩酸-ピクリン酸)


 図2に鋭敏化処理後(水冷)のSUS430の金属組織を示します。いずれの腐食液についても、図1とは異なり結晶粒界が明瞭に見えるため、鋭敏化していることが分かります。また、塩酸-ピクリン酸では結晶粒内が腐食されて結晶粒ごとに濃淡がついて見えますが、シュウ酸では結晶粒界が選択的に腐食されています。

鋭敏化処理後(水冷)のSUS430の金属組織

鋭敏化処理後(水冷)のSUS430の金属組織
図2 鋭敏化処理後(水冷)のSUS430の金属組織(上:シュウ酸、下:塩酸-ピクリン酸)


 図3に鋭敏化処理後(空冷)のSUS430の金属組織を示します。いずれの腐食液についても、図2より結晶粒界が明瞭になっているため鋭敏化が進んでいることが分かります。また、シュウ酸では結晶粒ごとに濃淡がつかないため、結晶粒界だけに注目して観察できることが分かります。

鋭敏化処理後(空冷)のSUS430の金属組織

鋭敏化処理後(水冷)のSUS430の金属組織
図3 鋭敏化処理後(空冷)のSUS430の金属組織(上:シュウ酸、下:塩酸-ピクリン酸)


 図4に鋭敏化処理後(炉冷)のSUS430の金属組織を示します。上、下ともに鋭敏化が進んでいる部位を観察したものです。シュウ酸で腐食することにより、鋭敏化が進んでいる結晶粒界に注目して観察できることが分かります。

鋭敏化処理後(炉冷)のSUS430の金属組織

鋭敏化処理後(炉冷)のSUS430の金属組織
図4 鋭敏化処理後(炉冷)のSUS430の金属組織(上:シュウ酸、下:塩酸-ピクリン酸)


参考文献
1) トラブル事例紹介:短時間で腐食したSUS304製部品について
http://www.iri.pref.niigata.jp/topics/H30/30kin7.html
2) 各種腐食液によるステンレス鋼の金属組織観察
http://www.iri.pref.niigata.jp/topics/H29/29kin1.html
3)板倉ほか, マルテンサイト系ステンレス鋼における焼入れ途中での炭化物析出, 熱処理,35-1, (1995), pp.36-41.
4)土山ほか, マルテンサイト系ステンレス鋼の組織および硬さに及ぼす未固溶炭化物の影響, 鉄と鋼, 80-12, (1994), pp.938-943.

  問い合わせ:新潟県工業技術総合研究所
       中越技術支援センター   斎藤 雄治
       TEL:0258-46-3700  FAX:0258-46-6900

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